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冊子「拉致監禁」シリーズ 1 痛哭と絶望を超えて
4.残された心の傷 塩谷知子
〈苦悩…、そして脱出〉
そんな中で、私は、両親や妹が犠牲になり、私のためを思って行動してくれたことを思うと、どうしても、もう一度統一教会に帰る気持ちになれなくなって、「私は隠れキリシタンのようにしているしかないのか…」など、本当に頭の中がおかしくなりそうなくらい考えました。冷静に物事を判断する力などなかったのだろうと思います。
しかし、「統一教会の教えを通して救いを感じていたことは、否定することができない」「主人はどんなに苦しんでいるだろうか……」と思うと、混沌とした状態が続いて、「いったい私の人生は、誰のものなんだ!」と大声で叫びたい心境でした。本当に苦しい日々が続きました。
自分自身の本心では、「自分の気持ちに正直に生きたい!」という思いでいっぱいだったのです。
牧師たちは、「もう大丈夫だろう」と私を信頼している様子で、拉致監禁されている兄弟の所へ一度一緒に訪問したり、これから拉致する予定の親や親族の方々が教会へ相談に来ているとき、「あなたの体験したことを話してあげて欲しい」と言われ、話をしたりしました。しかし、そうする中で、自分の本心を偽り、願ってもいない行動をしていることがたまらなく苦しく、「やはり、ここを出なければ自分という存在が自分でなくなってしまう」と思いました。
毎日、どうすべきかを、ただひたすら祈りました。
そんなある日、京都聖徒教会の壁に聖句をみつけました。
イザヤ書41章13節
あなたの神、主なるわたしはあなたの右の手をとってあなたに言う、
「恐れてはならない、わたしはあなたを助ける」?
神様の声だ!と確信し、涙があふれました。
私は自分の心を偽らず、正直に生きたい。
宗教間の争いの犠牲になりたくない。
そう思い、神様の導きを信じて脱走することを心に決めました。
リハビリ生活から38日目、拉致されてから107日目に、私は束縛された異常な環境からようやく逃げたのです。
1 痛哭と絶望を超えて
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