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冊子「拉致監禁」シリーズ 1 痛哭と絶望を超えて
5.逆境を越えて得た親子の絆 大森陽子
命懸けの脱出
ところで、お昼の12時から30分間だけは、部屋に監視がいなくなります。また、お寺の周りは農家であり、12時から12時30分までは人がいなくなるのです。監視が御飯を食べにいったすきに、私は服を着替えて隣の部屋に行って準備しました。窓は二重になっていたのですが、障子を破り、木の枠組みを全部外してサッシを開けました。
そしてもう一度祈ったのです。「神様、今私は飛び降りてここから出ていきます。もし、脱出が失敗したら、もう逃げることが難しくなります。その時は、もしかしたら申し訳ないですが、やはり死ぬかもしれません。ですから神様導いてください」と祈って窓から飛び降りました。その下には小さな川が流れていて、ずぶ濡れになりながら走ったのです。
私の母の姉は、監禁していることが外部に漏れることをとても恐れていました。お寺ですから、そういうことが漏れてしまえば広く知れわたってしまいます。私のお寺の周りには門徒が大勢いるので、「走るだけではだめだ、近くの家に逃げ込もう」と思って、とにかく裸足でその家に飛び込んだのです。
そして、アベルにつながらないと導かれないと思い、電話を貸してもらって教会に電話しました。電話で「今出てきました」と言うと、「陽子さん、6000年の出会いだね」とこう言われたのです。そのとき本当に涙が出て止まりませんでした。
そして、「そこの奥さんが良い方であるならば、車に乗せてもらって近くの病院まで逃げなさい。そこからタクシーを呼んで市内まで行きなさい」と指示してくれました。
その婦人はとても良い方で、裸足の私に靴と食べ物を下さって、病院まで送ってくださいました。そこからタクシーを呼んで市内まで逃げることができました。
1 痛哭と絶望を超えて
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