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広島夫婦拉致監禁事件・民事訴訟の訴状を公開(前半)
先回の記事「広島夫婦拉致監禁事件の被害者が民事提訴 」でお伝えした民事訴訟の訴状を前半と後半に分けて公開します。
<表記についての解説>
プライバシー保護のため個人名等は伏せて記載します(一部人物は実名表記)。
①原告についての表記
原告夫妻の名前は「夫」「妻」とし、太字ゴシックで表記しました。
②被告についての記載
原告夫妻の両親は「夫の父」「夫の母」「妻の父」「妻の母」と表記しました。また、原告夫妻の親族でない元信者の姉は「元信者の姉」、その夫は「元信姉の夫」と表記しました(いずれも太字ゴシック表記)。
③訴外人物についての表記
本文の中に「訴外妻の義弟」などの人物表記が出てきますが、「訴外」とは、本裁判において原告でも被告でもない人物のことです。訴外の人物の表記は、原告との関係で表記してあります(いずれも太字ゴシック表記)。
④補足説明の表記
本文中の補足説明は【当時3歳】など、【 】で括った(太字ゴシック表記)。
訴 状
平成28年5月16日
広島地方裁判所民事部 御中
原告ら訴訟代理人弁護士 福 本 修 也
当事者の表示
住所A 原告 夫
同 所 原告 妻
〒102-0083
東京都千代田区麹町四丁目3番地 麹町MKビル5階
福本総合法律事務所(送達場所)
電話03-5212-2223 FAX 03-5212-2224
原告ら訴訟代理人 弁護士 福本修也
住所B 被告 尾島淳義
住所C 被告 元信姉の夫
同 所 被告 元信者の姉
住所D 被告 夫の父
同 所 被告 夫の母
住所E 被告 妻の父
同 所 被告 妻の母
損害賠償等請求事件
訴訟物の価額 金1008万3780円
ちょう用印紙額 金5万3000円
第1 請求の趣旨
1.被告らは,各自連帯して,原告夫に対し,金348万1600円及びこれに対する平成26年7月26日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
2.被告らは,各自連帯して,原告妻に対し,金340万2180円及びこれに対する平成26年7月26日本訴状送達の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
3.被告らは,原告らに対し,暴行,脅迫,拉致,監禁,面談強要,電話による会話強要等を行い,又はこれらの方法を用いて,同原告が信仰する宗教を棄教することを強要してはならない。
4.訴訟費用は被告らの負担とする。
5.第1項及び第2項につき仮執行宣言。
第2 請求の原因
1.本件拉致監禁棄教強要事件(本件不法行為)の概要
被告らは,原告両名がかねてから世界平和統一家庭連合(旧名称「世界基督教統一神霊協会」,以下,「統一教会」という。)の信者として,その信仰を有していたことから,原告らを逮捕・監禁した上,棄教を強要しようと企て,共謀の上,
(1) 平成26年7月26日午後9時ころ,広島市●●●所在の被告妻の父方において,同被告,訴外妻の義弟,同妻の叔父,同妻の叔母,同妻の親族A,同妻の親族B,同妻の親族C,(いずれも妻の親族)ら5名が,原告妻を背後から押し倒し,口をタオルで塞ぎ,両腕を後ろ手にして両手首及び両足を縛り上げた上,寝袋の中に同原告の体を頭まで押し込み,もって同原告を不法に逮捕し,さらに,同原告を同所屋外に連行し,予め用意してあった停車中のワゴン車内に乗せ,被告妻の父ら5名で取り囲んでその脱出を不能にし,引き続いて同原告を大阪市●●●の★★ハイツ501号室内に連行した上,同月27日午前1時ころから同月31日午前2時ころまでの間,同室玄関ドアを鎖と南京錠2個を用いて厳重に封鎖し,被告ら数人が同原告を常時監視するなどしてその脱出を不能にし,もって同原告を不法に監禁し,その間,同室内において,訴外亡高澤守,被告尾島淳義らにおいて,監禁中の同原告に対し,こもごも統一教会を批判するなどして信仰を棄てるよう強要し,これに応じなければ同原告の身体の自由に対し将来にわたって引き続き危害を加えることを告知して脅迫し,同原告をして義務なきことを行わしめようとしたが,同原告が被告妻の母の携帯電話で110番通報し,駆けつけた警察官により解放され監禁からの脱出に成功したためその目的を遂げず,上記逮捕監禁の際の暴行により,全治2週間の右上肢擦過打撲傷,右下肢打撲傷,左下肢打撲傷の傷害を負わせた。
(2) 原告夫の叔父が入院して命が危ない旨申し向けて騙し,平成26年7月26日午後3時ころ,広島市●●●所在の原告夫方前路上において,被告夫の父ら8名が乗るワゴン車に同原告を同乗させ,最後列真中の座席に座らせて両脇を被告夫の父及び訴外原告夫の兄が固めて脱出を不能にして車を疾走させ,同原告の携帯電話及び財布を取り上げ,同原告の頭に袋を被せて目隠しするなどした上,上記★★ハイツ501号室に連行し,同月26日午後8時ころから同月31日午前2時ころまでの間,同室玄関ドアを鎖と南京錠2個を用いて厳重に封鎖し,被告ら数人が同原告を常時監視するなどしてその脱出を不能にし,もって同原告を不法に監禁し,その間,同室内において,訴外亡高澤守,被告尾島淳義らにおいて,監禁中の同原告に対し,こもごも統一教会を批判するなどして信仰を棄てるよう強要し,これに応じなければ同原告の身体の自由に対し将来にわたって引き続き危害を加えることを告知して脅迫し,同原告をして義務なきことを行わしめようとしたが,原告妻が被告妻の母の携帯電話で110番通報し,駆けつけた警察官により解放され監禁からの脱出に成功したためその目的を遂げなかったものである。
以下,事件の詳細及び損害等について分説する。
2.当事者
(1) 原告妻
ア.原告妻は,●年●月●日に父被告妻の父,母被告妻の母の長女として広島市内で出生し,同市内の高校を卒業後,■■大学法文学部に進学,平成9年3月に同大学を卒業した。
原告妻は,平成11年に■■試験に合格し,同12年1月から広島市内の■■事務所に勤務するなどして現在に至っている。
イ.原告妻は,平成10年ころ,統一教会の信者から伝道されたものの,入会はしないでいたが,平成12年夏頃,再度自ら教理を学ぶうちに,確信して統一教会に入会し,その信仰を持つに至った。
ウ.原告妻は,平成14年に同じ信者である原告夫と婚約をし,●年●月●日に婚姻入籍し,原告らの間には長女YN(●年●月●日生,【当時8歳】),長男YS(●年●月●日生,【当時3歳】)がいる。
(2) 原告夫
ア.原告夫は,●年●月●日に父被告夫の父,母被告夫の母の次男として広島県府中市内で出生し,同県福山市内の高校を卒業後,■■大学工学部に進学,平成5年3月に同大学を卒業した。
原告夫は,大学卒業と同時に■■株式会社に就職し,同社■■として現在に至っている。
イ.原告夫は,平成5年ころ,統一教会の信者から伝道されて教理の勉強を続け,同9年5月には被告夫の父ら家族の反対を受けた経緯があり,一時遠ざかった時期もあったが,引き続き教理を学ぶうちに確信し,平成12年ころに統一教会に入会し,その信仰を持つに至った。
ウ.原告夫が原告妻と婚姻したこと等は上記(1)ウの通りである。
(3) 被告尾島淳義
被告尾島淳義(以下,「被告尾島」という。)は,西日本福音ルーテル青谷教会執事をしているものであるが,訴外亡高澤守(以下,「訴外亡高澤」という。)と共に統一教会信者に対する拉致監禁,棄教強要活動を行っている者であり,拉致監禁の順番待ちの信者についてどの信者から先に行うかといった事前協議の段階から訴外亡高澤に共謀加担し,互いに協力しながら第一線で拉致監禁・棄教強要活動を行ってきたものである。
被告尾島は,訴外亡高澤による統一教会信者のHK,AH,HH,富澤裕子及び寺田こずえに対する拉致監禁,脱会強要事件にも共謀加担している。
(4) 被告元信姉の夫,同元信者の姉
被告元信者の姉は,約2年前に実妹で統一教会信者であったHTを訴外亡高澤と共謀して拉致監禁して脱会させた人物であり,その後,夫である被告元信姉の夫と共に訴外亡高澤の指揮下で他の統一教会信者の拉致監禁脱会強要活動に従事してきた者である。
(5) その他の被告
被告妻の父及び同妻の母は原告妻の両親である。
被告夫の父,同夫の母は原告夫の両親である。
なお,首謀者である訴外亡高澤は,本件逮捕監禁致傷・強要未遂事件に対する刑事捜査の過程において,自殺したものである。
3.本件拉致監禁棄教強要事件犯行(不法行為)の経緯及び状況
(1) 事前謀議
被告妻の父,同妻の母,同夫の父及び同夫の母は,原告らを統一教会から脱会させようと考え,訴外亡高澤に相談をしたところ,同高澤が長年実践し続ける拉致監禁による脱会強要の手法を被告妻の父らに教示し,平成26年7月ころ,上記被告妻の父ら4名,他の両家の親族及び監禁現場指揮監督役を務める予定の被告元信者の姉らを広島市内某所に集め,原告らに対する拉致監禁実行直前の犯行計画の謀議(役割分担等)及び指導を行った。
(2) 原告妻に対する犯行に至る経緯及び状況
ア.被告妻の母は,原告妻を自宅に誘き寄せて拉致するため,平成26年7月初旬ころ,同月26日,27日に子供達を連れて帰省するよう勧めた。原告妻は,長女が26日の盆踊りを楽しみにし,27日午前中に習い事があることから,27日昼に帰省する旨伝えたが,同被告は26日の帰省を強く勧め,同原告は仕方なく同日の帰省を承諾した。
イ.同日午後,原告妻が長女・長男を連れて被告妻の父方に帰省すると,実妹の訴外妻の妹,叔父夫婦である訴外妻の叔父及び同妻の叔母がいた。被告らは,夕食後,客間で寝ていた同原告の長男を居間に移動させ,午後8時過ぎ頃,被告妻の母が「子供達にお菓子と本を買ってやる」と言って,原告妻の長女及び訴外妻の妹の娘を連れて訴外妻の妹と共に4人で出かけた。
原告妻が長女の問題集を作成していると,被告妻の父から「こっちに来て話そう」と言われて客間に行くと,そこには訴外妻の義弟が来ていた。
ウ.原告妻が話の輪に加わって話をしていた午後9時ころ,突如,訴外妻の義弟から背後から組み伏せられ,同時に訴外妻の親族A及び同妻の親族Bが部屋に入ってきた。被告妻の父は同原告の口をタオルで塞ぎ,訴外妻の叔父及び同妻の叔母らが同原告の両肩,両足を押さえつけて,両手首と両足を縛り上げようとした。同原告は,「これは統一教会の信仰を強制的に棄教させるための拉致監禁だ」と悟り,「ここで拉致されてしまうと,2人の子供と会えなくなる。私達家族の生活が滅茶苦茶になってしまう」という思いで「拉致監禁は犯罪よ!離して!」と叫び,子供の名前を叫び続けながら必死に抵抗した。すると,その場に訴外妻の妹が戻ってきており,CDプレーヤーの音量を上げて音楽を流し,同原告の声が近所に聞こえないようにした。被告らは,同原告のポケットから携帯電話を奪い取り,ハンドバックから同原告の自宅の鍵と保険証等を抜き取った。同原告が激しく抵抗したため,約10分程度格闘が続き,被告妻の父が力一杯口の辺りをタオルで押さえつけ,同原告が「息が出来ない!苦しい!」と訴えたが,同被告は「鼻で息をしろ!」と言って手を緩めなかった。同原告は,両足首に8の字型の赤い紐の輪をはめられ,更に,紐で両足首と両膝及び後ろ手にされた両手首を縛られ,口にタオルで猿ぐつわをされ,その状態で寝袋に頭まですっぽり入れられた。更に,その上からも紐で縛られた。原告妻は,寝袋に入れられた状態で被告らに担がれて家の前に停めてあったワゴン車に運び込まれ,同車は発車した。
エ.ワゴン車が発車後,原告妻は頭だけ寝袋から出され,右側には訴外妻の叔母が,左側には被告妻の父が座って同原告を監視し,ワゴン車は関西弁を話す見知らぬ男が運転していた。助手席には訴外妻の叔父がおり,2列目には訴外妻の義弟がいた(訴外妻の親族Aと同妻の親族Bは,実家での拘束の際に加わっただけで,ワゴン車には乗らず)。
発車後,ワゴン車は広島インターから高速に乗り岡山方面に向かったが,原告妻が「どこまで行くのか」と尋ねても誰も答えず,途中でトイレに行きたいと言っても許されなかった。車中被告妻の父が度々携帯電話でメールを送り,現状を現場指揮者である被告元信者の姉に逐次報告をしていた。被告妻の父はワゴン車の走行位置を伝えるための携帯メールを事前に何通も用意し,各地点を通過するごとに携帯電話から送信していたものである。高速道路を降りる直前,同原告はタオルを巻かれて目隠しをされた。
オ.上記★★ハイツに到着し,エレベーターホールに通じる階段前にワゴン車が停まると,同原告は,予め足の紐を外して逃走の機会を窺っていたことから,車のドアが開いた瞬間,逃げ出そうとしたが,被告らが,「もう一度車に押し込めろ!」と言って車内に引き戻そうとしてもみ合いになった。同原告が車内に引きずり込まれると再び車が発車したため,同原告がパワーウインドウを開けて車外に向かって「助けて!警察呼んで!」と叫んだところ,被告らに猿ぐつわされ,両手首をさらし製の紐で前縛りに縛られた。被告妻の父は携帯電話で被告元信者の姉に電話を入れ,「寝袋が捻じれてチャックが下に行き,寝袋にもう一度入れられない。無理だ」と言って状況を報告したが,断固として寝袋に入れるよう指示があり,被告妻の父は「もう一度寝袋に入れないといけないんだって」と他の被告らに説明した。被告らは,一旦,車を停めて再度原告妻を寝袋に入れ直し,頭に黒い袋をかぶせた上,再度マンションの上記階段前辺りに停車した。同原告は被告らに担がれて車から出され,501号室のある5階に向かった。エレベーターを降りた瞬間,同原告が「助けて!人殺し!警察呼んで!」と大声で叫んだことから,被告妻の父が「静かにしろ !」と言って同原告の口を力一杯塞ぎ,再度担ぎ上げて501号室に担ぎ込まれた。この時,同月27日の午前1時か2時頃になっていた。
続きは次回「後半」