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月刊誌『財界にっぽん』が神戸学院大学・石崎教授と宗教ジャーナリスト室生氏の対談記事を掲載!
月刊誌『財界にっぽん』12月号に、「強制棄教によるPTSD研究を忌避し抑圧する日本の学会-米国心理学会で発表した石崎神戸学院大教授に聞く」と題する記事が掲載されました。筆者は、宗教ジャーナリストの室生忠氏です。
対談形式の記事では、神経心理学、臨床心理学、医療心理学を専門として神戸学院大学で教鞭をとる石崎淳一教授が、世界では稀にみる強制棄教による心的外傷後ストレス症状の研究に取り組んだ経緯や臨床結果の分析について詳述。「今回の結果を見ると、やはりより詳細に実態解明する必要がある」と述べ、さらなる研究への意欲を見せています。
室生氏は、「拉致監禁・強制棄教の根絶の決め手は、PTSD問題にある」と論じ、その理由として、PTSD被害に対するメディアと司法の理解の浸透を挙げました。
また、被害の責任追及を恐れた「脱会説得派の牧師、脱会屋、弁護士、学者ら」が、「必死に“こじつけ”抵抗を試みて」いることに触れ、『宗教からの強制脱会プログラム(ディプログラミング)によりPTSDを呈した1症例』(池本桂子・中村雅一、『臨床精神医学』第29巻10号、2000年)に対して脱会説得派が「池本・中村(筆者補注・論文)の症例はわずか1例であり(中略)典型的な事例とは言えない」(櫻井義秀『カルト問題と社会秩序2:脱会カウンセリングと信教の自由』)や、脱会説得によるPTSDの発症は「(筆者補注・宗教的マイノリティに施された)マインド・コントロールが残した『傷あと』だ」(牧師・黒鳥栄『自立への苦闘』)などと主張していることを紹介しました。
石崎教授は続けて、日本トラウマティック・ストレス学会の機関誌『トラウマティック・ストレス』編集委員会の不合理な対応について言及。石崎教授が2012年6月に『強制棄教というトラウマ体験―ある「生還者(SUVIVOR)の集い」の予備的報告』と題する発表を同学会で行った後、同機関紙に、学会発表を論文化した『信仰に対する「強制的説得」体験のトラウマ的影響に関する予備的報告』を投稿したところ、編集委員会から掲載拒否されたエピソードを紹介しました。
学会発表した論文を、その学会機関誌が掲載しないことは「一種の自己矛盾」と石崎教授は指摘。続けて、編集委員会が不採用を通知する文書に明記された拒否理由には「心底憤りを覚えます」と述べた上で、該当部分を引用しました。
〈先行する拘束体験と強制的説得の影響が十分に示されていない中で、強制的説得に関するトラウマに関して論じるには困難を感じます。強制的説得は確かにストレスではありますが、PTSDの診断基準に合致せず、むしろ先行する拘束体験の方がトラウマとして考えられる点からも、無理を感じられます〉
記事では「先行する拘束体験」とは「宗教的マイノリティの信仰体験」の意味であることを確認した上で、石崎教授の「この人は私よりこの問題に精通しておられるようです(苦笑)。私は『新しい対象だからこれから議論を深めましょう』と問題提起をしているのに、編集委員会の名でこの文章を書いた人は、どんな先行研究をしたのか?寡聞にして私はそういうデータを示した日本の学術論文を知りません。どんな論拠でそう断定するのか。自分のデータを示してほしい」と批判しました。
石崎教授は最後に、「繰り返しになりますが、強制的説得によるPTSD発症の可能性は新しいテーマです。今回のAPA(米国心理学会)ではトラウマ分野で発表しましたが、APAには異文化や家族、そしてもちろん宗教関連の分野もあって、それらともオーバーラップする問題です。韓国学会の専門家も興味を示していますし、新しい研究組織の立ち上げも視野に入れて、世界のトラウマや宗教関係の研究者、臨床家、宗教関係学者などと幅広く議論を深める必要があると思っています」と強調しました。