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“拉致監禁”の連鎖 パートⅦ、Ⅷを終えて(上)
「拉致監禁否定派」は調査拒否
国境なき人権が「拉致を確認できた」と昨年末に公表した報告書(円内写真は同人権のウィリー・フォートレ代表)
連載パートⅧでは、昨年末に国境なき人権が公表した報告書「Japan:Abduction and Deprivation of Freedom for the Purpose of Religious De-Conversion(日本‥棄教を目的とした拉致と拘束)」とその後の拉致監禁問題をめぐる海外の動向を追った。
これまで拉致監禁について、第三者機関が独自に調査してその非を糾弾したことはなかった。その意味で、国際的な人権団体として定評のある国境なき人権の報告書は、被害者らが願う「拉致監禁根絶」への大きな一歩となったことは間違いない。
報告書はさまざまな方面に影響を与えた。すでに連載の中でも触れたが、米国務省の「国際宗教自由報告書」で取り上げられ、国連人権理事会の事務局的役割の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)が「普遍的・定期的審査(UPR)」に提出した文書の中でも扱われた。
国境なき人権は報告書の中で、「近年減少しているとはいえ、長期間にわたり執拗に繰り返されてきた強制棄教を目的とする拉致の存在を確認できた」と明確に述べている。
そして「情報源には、調査報道で有名なジャーナリスト、元国会議員、拉致被害者、拉致を行った親、弁護士、心理学者、宗教学者が含まれている。親たちや脱会カウンセラーに裁判所が下した判決文もまた、この問題の存在を裏付けている」と強調している。
一方で、国境なき人権は「反統一教会グループ」「拉致監禁否定派」といわれる人たちにもコンタクトを取り拉致監禁に対する見解を求めようとしたが、調査の回答を拒否されたという。
報告書の脚注では「反カルト運動の見方を知るため、英語の分かる責任者に連絡を取ろうとしたが、複数回の通知にもかかわらず回答を得られなかった」としている。
現在、12年以上にわたって監禁された後藤徹さんの民事訴訟の法廷が断続的に開かれている。国境なき人権の報告書は、後藤さんの被害についても多くのページを割いている。
被告側や「反統一教会グループ」は拉致監禁の存在自体を否定している。それなら、著名な人権団体の調査に堂々と応じ、「拉致監禁というものは存在しない」と持論を述べればいいはずだ。
ただ、否定するからには客観的で明確な証拠や理由が必要になってくる。
そのため、調査に回答しないのは「拉致監禁を否定する証拠がないからでは」と判断されても仕方がない態度といえるだろう。
世界的な人権団体が客観的に拉致監禁問題を調査し報告書として公表したことは、拉致監禁を否定するグループに、ただ口先だけで否定するのではなく、明確な根拠の提示を迫ることにもなったのだ。
-つづく-