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“拉致監禁”の連鎖(200) 日本に迫る「人権の黒船」
日本に迫る「人権の黒船」
国連人権理事会が開かれた国連欧州本部(ジュネーブ)。サイドイベントでは拉致監禁問題が取り上げられた
「国境なき人権」代表のウィリー・フォートレ氏と人権活動家のアーロン・ローズ氏は、国連人権理事会の関連サイドイベント以外でも、さまざまな場所で新宗教信者に対する拉致監禁問題を取り上げ、批判してきた。
今年7月には、統一教会などの新宗教に批判的な「国際カルト研究会(ICSA)」がカナダのモントリオールで開いた国際会議にフォートレ氏が参加。その場で「世界におけるカルトと宗教の自由」をテーマにプレゼンし、拉致監禁の被害者が実際に存在することを強く主張した。
フォートレ氏は「宗教の自由は伝統的な宗教だけに与えられるべきで、『カルト』などに対しては否定されるべきか」と問いを発した上で、「国際法の答えは明確に『ノー』だ」と断言。「家族が子供を心配していることで、拉致監禁や強制改宗を正当化することはできない」と訴えた。
また、9月にモロッコで行われた「新宗教研究センター(CESNUR)」の会議では「拉致監禁は違法であり、日本政府が自国民の人権を守るために責任を果たしていない」と述べ、日本政府を批判した。
一方、ローズ氏は8月1日に、米国連邦議会で開かれたシンポジウムに参加し「米政府は日本の当局に対し、この問題を提起すべきだ」と迫り、米国が問題解決のために動くよう訴えた。
このような国際会議の場で、統一教会と利害関係のない第三者が拉致監禁の実態を報告し、強く批判したことは、人権専門家や宗教学者などの注目を集めた。
ローズ氏は先月31日の国連人権理事会のサイドイベントの場で、日本の国会議員と会った際、拉致監禁の解決には「黒船」(外圧)が必要だと言われたことに触れ、「国際社会は日本政府に声を大にして訴えなければならない」と強調した。
フォートレ氏はサイドイベントの後、本紙の取材に「ショッキングな点は、拉致監禁された信者たちがさまざまな迫害を受けているにもかかわらず、民主国家で警察当局や法曹関係者が必要な対策を講じていないということだ。(信教の自由に関して)まったくの無法状態になっている」と憤った。
先月25日、国連の人権特別報告者(宗教の自由担当)のハイナー・ビーレフェルト氏は国連総会に報告書を提出したときのニュースリリースで、改宗および改宗されない権利の擁護を訴えた。
通常、国連特別報告者は特定の国や個人名を挙げて見解を述べることはないため、どの国に関してかについては言及を避けながらも、「改宗を強制されない権利の重大な侵害が起きている」と報告。そして「国家は信教の自由に対する人権を尊重し、保護、推進することが義務付けられている」ことを改めて強調した。
統一教会をはじめとした新宗教信者への拉致監禁問題の解決を求める“黒船”は、すでに日本に向けて動いている。
日本政府が問題解決への取り組みを始めなければ、海外から「人権先進国」と評価されてきたイメージを歪める大きな代償を払うことになるだろう。
パートⅧ完
(「宗教の自由」取材班=編集委員・堀本和博、同・片上晴彦、同・森田清策、ジュネーブ・小川敏、社会部・岩城喜之)