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“拉致監禁”の連鎖(193) 脱会屋への謝礼は「400万~1000万円」
脱会屋への謝礼は「400万~1000万円」
後藤徹さん(左)を取材する国境なき人権の調査員ビクトリア・パーカー氏(後藤徹さん提供)
「国境なき人権」の報告書第2章「現地調査の報告」は、取材を通して拉致監禁が確認できたことを中心に記述、日本で起こっている事実を客観的に伝える報告書の核心の部分だ。
この中には「個人を長期間監禁して行動を制約することは、国際的な人権規準から見ても容認できない」「(拉致の実行を手伝った人は)共同責任を負うこと、刑法で3カ月から7年の懲役刑に相当する犯罪であることを認識しなければならない」などと法律に照らして厳しい言葉が並ぶ。
特に、「脱会カウンセラー」と呼ばれる脱会屋やキリスト教牧師に対しては「親をあおって子供を拉致させ、子供が脱会するまで監禁するよう公然と指導している。それ自体が法律違反に相当するものだ」と強く非難。脱会屋らが拉致監禁を「保護・説得」だと正当化していることについては「その裏面にある強要、威迫、脅威を隠すものに過ぎない」と喝破している。
国境なき人権は、新宗教に入った信者の親が拉致監禁を実行するまでの経緯を、さまざまな証言から明らかにしている。
報告書は「(子供が新宗教に入り)当惑した親は相談できる人、(中略)反カルト活動家・団体などを探すだろう」し、そうすれば「脱会カウンセラー(脱会屋)と出会って勉強会」に出入りするようになると親の心理面を説明。その勉強会などで「(脱会屋、牧師らから)さらに不安をあおられ、他の親が子供を拉致して棄教させるのに成功したと聞けば、自分も拉致を含むあらゆる手段でかわいい子供を救おうと決心するにいたる」と分析する。そして「強制的に脱会説得をして棄教させ、場合によっては別の信仰に改宗させるほかに解決の道はないのだと、次第に確信するようになる」と、親の心理を追跡している。
さらに「学習会には、子供を心配する親兄弟が詰めかけていた。それ(学習会)は心理的な弱みに付け込む形の布教だといえないだろうか」と問い、成人であることを無視し親心に付け込む手法を批判した。
実際に統一教会の女性信者の拉致監禁を実行した父親は、国境なき人権の取材に「毎週末、車で片道3時間かけて通って反統一教会の勉強会に参加した」と答えた。また、勉強会には50人から80人の父母たちが参加し「統一教会から子供を脱会させることに成功した両親の体験談、救出するときの具体的なやり方などで構成されていた」と証言した。
そればかりか、拉致の実行を決意した際には「牧師と個別面談を持った。彼(牧師)は私たちを助けてくれる親戚や友人を集めるよう指示し、計画実行に関するあらゆる厳格な指導を行った」と“黒幕”主導で拉致監禁が実行されてきたことを明かしている。
報告書はさらに「脱会説得に携わる人たちが親から謝礼を受け取っているとの証言を得た。(中略)ケースバイケースで金額は400万円から1000万円まで」と、重要な事実をつかんでいる。
近年の拉致監禁被害については「成人信者の中から、2011年には少なくとも5人がそれぞれの両親によって、棄教を目的に拉致された。10年と09年には分かっているだけで9件と3件の拉致事件が起きた」と認定した。
人権調査のプロとして国境なき人権が調べ上げたこれらのことは、本連載が再三指摘してきたこととほぼ同じ内容で、改めて拉致監禁による強制棄教の非道さが浮き彫りになった。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-