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“拉致監禁”の連鎖(191) 動かぬ警察に驚く人権調査員
続・世界からの指弾(5) 動かぬ警察に驚く人権調査員
国際会議の場で拉致監禁の実態を説明する国境なき人権代表のウィリー・フォートレ氏
(全国拉致監禁・強制改宗被害者の会提供)
「国境なき人権」による日本の拉致監禁の実態調査は、主に代表のウィリー・フォートレ氏や女性調査員のビクトリア・パーカー氏、人権活動家のハンス・ノート氏らが行った。
調査対象は約20人の被害者のほかに、加害者側、弁護士、ジャーナリスト、宗教学者や心理学者などの専門家、日本の国会議員、裁判所の判決など多岐にわたっている。統一教会以外にエホバの証人の信者らも取材し、拉致監禁の被害実態を暴いた。
統一教会などの新宗教に否定的な団体が、拉致監禁は「誇張あるいは捏造」されたものと主張していることから、念には念を入れて調査。「客観的で信頼できるさまざまな情報源に当たった」と報告書の中で述べている。
その結果、「長期間にわたり執拗に繰り返されてきた強制棄教を目的とする拉致監禁の存在を確認できた」と断定した。
「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」代表で12年以上も監禁された後藤徹さんは昨年7月に、スペイン・バルセロナで国境なき人権のメンバーから最初の聞き取り調査を受けた。
後藤さんは新宗教に批判的な団体「国際カルト研究協会(ICSA)」がバルセロナで会議を開いたとき、自身の拉致監禁体験を証言するために会議に参加していた。そこに、国境なき人権の調査員パーカー氏が面談に来たのだ。
「国境なき人権の調査員がICSAの会議に来ているとは知らなかったので驚いた」という後藤さんだったが、パーカー氏と30分ほど面談し、拉致監禁の被害状況を説明した。
それから1カ月後に、今度は国境なき人権代表のフォートレ氏が詳細な調査のため訪日。後藤さんは8月下旬に東京・渋谷のウイークリーマンションでフォートレ氏と会った。
「最初に会ったときは気さくな対応を見せたが、取材が始まると余計な話を一切せず、淡々と被害状況を聞いてきた」という。
机を挟んで向き合う後藤さんとフォートレ氏。これまで話をしてきた人とは違い、余計な感情を挟まない聞き取り調査に、後藤さんは「まだ調査中の段階だから、拉致監禁の事実を認定するような発言や価値判断を下すようなことは一切言わないという徹底したプロ意識」を垣間見た。
フォートレ氏は事前に、後藤さんのことを詳細に調べており、約2時間の調査では、より細かい内容や虐待の有無、監禁時の心理状態などを聞いてきた。
中には、「監禁されている間に、自殺を考えたことがあるか」「髪の毛は誰がカットしていたか」など、これまでの国際会議の場や取材で聞かれたこともないような視点からの質問もあった。
2度の監禁被害に遭い、その影響から心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が出た今利理絵さんは、夫の智也さんと一緒に9月上旬に、東京・渋谷でフォートレ氏の取材を受けた。見た目はラフな服装のフォートレ氏だったが、智也さんは話をするうちに「人権保護で世界を相手に仕事をしている人」という印象を持ったという。
智也さんが強く記憶に残ったのは「妻が拉致されたと警察官に訴えたら、『両親が連れ去ったのなら、何もできない』と言われた」との話に、「夫の訴えなのに、なぜ(警察は)何もできないのだ」と警察の対応が理解できず非常に驚いた様子を見せたことだった。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-