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“拉致監禁”の連鎖(190) 「外圧」なければ解決難しい
続・世界からの指弾(4) 「外圧」なければ解決難しい
日本外国特派員協会で記者会見し、拉致監禁を激しく批判する「国際ヘルシンキ人権連合」元事務総長のアーロン・ローズ氏
国際的人権団体の「国境なき人権」が拉致監禁問題を調査して報告書にまとめる契機となったのは、この団体が加盟していた「国際ヘルシンキ人権連合」の元事務総長で、著名な人権活動家のアーロン・ローズ氏が拉致監禁の被害者から事情を聞くために日本を訪問したことだった。
ローズ氏は2010年8月に、ハサン・ムラトビッチ元ボスニア首相やウィレム・ファン・エーケレン元オランダ国防相・外務副大臣らと訪日し、拉致監禁被害者たちと面会した。
そこで被害者たちから明かされた話にローズ氏は耳を疑った。「日本国民が憲法で保障された権利および日本が国家として義務を負う国際的な人権規準に対する重大な違反に当たる」ものだったからだ。
被害状況を聞くにつれ、拉致監禁の非道さに衝撃を受けたローズ氏は「証言を聞いて心を揺さぶられ、正直に言って非常に怒っている。悪夢のような状況だ」と憤慨した。拉致監禁は被害者の家族らの手で実行されることから、人権侵害であると同時に「家庭内暴力の一つだ」とも位置付けた。
ローズ氏ら一行の代表と被害者は、同年8月5日に「日本外国特派員協会」(東京・有楽町)で記者会見を行った。ローズ氏は海外のメディアを前に「これ(拉致監禁)は法の下の平等の否定だ。(被害者は)法によって保護されるという権利が侵害されている」と拉致監禁を激しく批判した。
しかし、拉致監禁の被害は一向に無くならないばかりか、警察も取り締まらず、国内の人権団体から非難の声も上がらなかった。ローズ氏が被害者と話す中で感じたことは「被害者は深く傷つき、その苦しみを誰にも分かってもらえず、当局が無策であることにいらだっていた」ことだったと言う。
ローズ氏は日本滞在中、国会議員とも面会した。その場で拉致監禁が取り締まられないことを追及すると、問題の打開には「黒船が必要だ」という答えが返ってきた。「黒船」のような「外圧」がなければ、拉致監禁問題の解決は難しいという意味である。
この発言を聞いたローズ氏は、当時の心境を「日本独特の文化がいかに執拗であるか、諦めにも似た感情に襲われた」と、国境なき人権の報告書で語っている。
「外圧でなければ日本が変われないというのなら、自分たちが『黒船』になるしかない」。12年以上にわたって拉致監禁された後藤徹さんは、ローズ氏の思いをそう推測する。
拉致監禁問題を広く国際社会に訴えることで「問題が終息する」ことを切望したローズ氏は、客観的かつ公正に拉致監禁を調査できる人権団体を探した。
白羽の矢が立ったのが、かつて自身が事務総長を務めていた「国際ヘルシンキ人権連合」に加盟していた人権団体「国境なき人権」だった。「信教の自由に関する分野に強く、経験が豊か」(ローズ氏)で、他の人権団体からも評価が高かったからだ。ローズ氏は独自に調査してみるよう持ちかけた。
「国境なき人権」の調査員が拉致監禁の被害状況を聞くために被害者の後藤さんらに接触してきたのは、ローズ氏の訪日から約1年後の11年7月だった。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-