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ジュネーヴの国連欧州本部で拉致監禁問題をテーマに「サイド・イベント」
投稿者:魚谷俊輔
去る10月31日、ジュネーブの国連欧州本部の一室で、日本における統一教会信者の拉致監禁・強制改宗問題を扱ったサイド・イベントが開催されました。この日は、国連人権理事会の普遍的定期審査(UPR)の作業部会において、日本の人権状況に関する審査が行われた日であり、国際社会に対して日本の隠れた人権問題を訴える良い機会となりました。
この場で、拉致監禁の被害者が自らの体験を証言したほか、3名の人権専門家が次々にこの問題に対する日本政府の対応を批判し、問題解決のための提言を行ないました。私は後藤徹さんの通訳としてジュネーブに行ってきましたので、その内容を簡単にレポートします。
清水与志雄牧師の被害者であるアントール美津子さんの証言が代読された
正午から始まったイベントには、国連人権高等弁務官事務所の代表をはじめ、英国、デンマーク、バチカン、日本の政府代表部などから約30名が参加しました。
テーマは「日本における宗教差別」で、主催はUPF、共催は国境なき人権、 全国拉致監禁強制改宗被害者の会、FOREF-Europeです。
サイド・イベントの口火を切ったのは、国際的な人権活動家で、元国際ヘルシンキ人権連合事務総長のアーロン・ローズ博士でした。ローズ博士は、日本政府が拉致監禁強制改宗の犯人を起訴しないのは、市民を犯罪から守るという、日本の法律が定めている義務に違反しているし、国際的な人権規約にも違反していると厳しく批判しました。
アーロン・ローズ博士・国際ヘルシンキ人権連合元事務総長
続いて、全国拉致監禁強制改宗被害者の会の後藤徹代表が、十二年五ヶ月にわたる自らの被害体験を語りました。後藤氏は「拉致監禁事件がいまも継続していることを、どうかご理解ください。この写真は、この二年間で拉致監禁された統一教会信者です。私はこの会議に参加した多くの方々が、日本政府が事態を改善し、人権を守るように影響力を行使してくださることを、強く要請いたします」と訴えました。
本来ならば、続いてアメリカ在住の被害者であるアントール美津子さんが証言する予定でした。しかし、10月29~30日にアメリカ東部を襲ったハリケーン「サンディ」の影響で飛行機が欠航となったため、美津子さんの証言が代読されることとなりました。美津子 さんは「私は自分の個人的な体験を話しますが、私が強制棄教のために拉致監禁された何千人もの統一教会女性信者を代表していることを理解してください。被害者の八〇%は女性です」と語り、これが女性の人権問題でもあることを強調。自分が両親と牧師を相手取って民事訴訟を起こし、最高裁まで争ったにも関わらず、『家族の問題』であることを理由に、すべての請求が棄却されたと訴えました。
続いて、ベルギーに本部を置く人権団体「国境なき人権」のウィリー・フォートレ代表が発言しました。「国境なき人権」はこの問題に対する独自の調査を行い、2011年12月に「日本―棄教を目的とした拉致と拘束」と題する60ページに及ぶ詳細な報告書を発表しています。フォートレ氏は、次のように語りました。
国境なき人権代表のウィリー・フォートレ氏
「アメリカ国務省の『国際宗教自由年次報告書』は、この問題を毎年モニターしてきたが、2009年の報告書にはこうした拉致や監禁の主張は「独自に確認できなかった」と記載した。そこで我々の調査の目的は、こうした行為が実際に存在することを確かめることにあった。私たちは報告書を発表することによって、人権問題に関わる世界中の人々の関心を喚起することにした。それは、これまでこの問題を扱った人権団体が一つもなかったからである。」
最後に、フランスの弁護士であるパトリシア・デュバル女史が法的な観点からコメントしました。彼女は、日本は「市民的及び政治的権利に関する国際規約」(ICCPR)を批准しているため、日本政府は拉致監禁・強制改宗を防止する責任があるだけでなく、犯人を起訴するなどの救済措置も取らなければならない義務を、国際社会に対して負っていると指摘しました。さらにデュバル氏は、国連の任命する「宗教および信仰の自由に関する特別報告官」が日本を訪問して、この問題に関する調査を行うように働きかけるべきだと訴えました。
私は2010年6月に行われた同テーマのサイド・イベントにも参加しましたが、今回はそのときよりもはるかにレベルアップした内容となりました。
パトリシア・デュバル女史 (弁護士)