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“拉致監禁”の連鎖(188) パートⅧ 米宗教大使、「強制改宗は深刻」
続・世界からの指弾(2) 米宗教大使、「強制改宗は深刻」
「信教の自由」を討議する特別セミナー「今すぐストップ宗教迫害!」で
参加者らと記念撮影する国際宗教自由担当大使のスーザン・クック氏(前列中央)
「国境なき人権」の拉致監禁実態報告書を取り上げた米国務省の「国際宗教自由報告書」は、1998年に宗教自由法が米議会で成立したことによって毎年作成されるようになった。
宗教自由法は、宗教迫害の強い国には経済制裁を課すこともうたっており、米政府は報告書を根拠に宗教の自由促進に向け大局的判断を下している。
米国が「宗教の自由」を重視するのは、建国の歴史と関係している。
米国の近代国家としての成り立ちは、祖国の英国で弾圧を受けたピューリタン(清教徒)たちが「信教の自由」を求めて大西洋を渡ってきたことにある。建国の理念でも「自由」が重要視され、特に宗教に対する迫害については厳しく目を光らせている。
拉致監禁について「信教の自由の侵害」という観点から強い批判があるのは、こうした米国の宗教に対する姿勢が連綿と受け継がれているからだ。
宗教自由法成立の翌99年5月には、クリントン大統領(当時)の宗教顧問を務めていたロバート・サイプル氏が「国際宗教自由」担当の初代「大使」に就任し、大きな権限を与えられた。サイプル氏は米国の経験から「宗教の自由ほど重要なものはない」と強調している。その声は宗教迫害が顕著な中国や北朝鮮だけでなく、世界各国、各地に向けられたものだ。
宗教自由報告書は初年度版から、中国のチベット仏教や新疆ウイグル自治区のイスラム教徒への弾圧や、気功団体の法輪功が厳しい取り締まりを受けていることなどがまとめられている。現在、これらの問題について世界中から非難の声が上がっている状況を見れば、報告書の内容がいかに客観的で公正であったかが分かる。
しかし、初年度からほぼ毎年、この報告書で指摘されてきた拉致監禁問題に対して、日本政府は眠っているに等しい対応だった。問題の解決に向けて積極的に動くどころか、被害者の聞き取り調査さえまともにしてこなかった。
「国際宗教自由報告書」を初めて発表したときの記者会見で、サイプル氏は「信憑性のある情報だけ掲載されている」と断言。「統一教会員によって訴えられた強制改宗、拉致監禁といった虐待が起こっているようなので、報告するに足る深刻な内容だと判断し、報告書に記載した」と述べ、暴力的に棄教を迫る拉致監禁行為を非難した。
現在の国際宗教自由担当大使は女性のスーザン・クック氏だ。
昨年7月に民間団体がワシントンで開いた世界の諸宗教に対する迫害の実態や「信教の自由」を討議する特別セミナー「今すぐストップ宗教迫害!」でクック氏は「我々には宗教迫害を止め、信教の自由を世界中に普及させる共通の使命がある」と発言し、「信教の自由」の重要性を強調した。
米国際宗教自由委員会委員長をかつて務めたエリオット・エイブラムズ元米国務次官補は、2001年1月の本紙とのインタビューで、日本でディプログラミング行為が見逃されている現状について「人気のない(少数派)グループや個人こそ、人権の保護を必要としている」と述べ、人権侵害を取り締まらない当局者らの不作為を批判した。
こうした大きな権限を与えられた「宗教の自由」の担当者たちが批判の声を上げているにもかかわらず、日本ではいまだに拉致監禁の不法行為が続いている。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-