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2012年6月9日

“拉致監禁”の連鎖(174)PTSD発症(2)


悪夢にうなされた2年間 

1回目の拉致監禁で自力脱出してから約1年後の1996(平成8)年11月頃、今利理絵さんは顎に痛みが走り、口が開かなくなった。

監禁から脱出した後「2年間、毎夜悪夢を見た」と話す今利理絵さん  

 

年が明けて、2度目の拉致監禁被害に遭ったのは、治療経過を診てもらうため、再び同病院を訪れる直前だった。5カ月余りに及んだ2度目の監禁から解放された後も、悪夢が続き、顎関節症が再発した。  

藤沢市内にある夫の智也さん(42)の実家で暮らしていたため、今度は同市内の歯科医院で治療を受けた。完治するまで長くはかからなかったが、悪夢にうなされ眠れない夜が2年間も続いた。多い時には一晩に3度も見ることもあった。  

当時見た悪夢について、理絵さんは次のように語る。

 「ふと気が付くと、近くに家族がいるんです。曲がり角から、父親が猛ダッシュで走ってきて、ものすごい目つきで、私を捕まえに来る。私はワンボックスカーに乗せられ、降ろしてほしいと訴えても、そのまま連れ去られる。そのほかは、マンションかホテルのような一室で暮らしていて、ふと窓の外を見ると、父親が私を見張っている」  「やめて!」「どうして!」「車から降ろして!」とうなされ、叫び声を上げては目を覚ます夜が何日も続き、心身とも疲弊。

解放後1カ月間は、横になったまま過ごした。

眠れば夢の中で、また家族に追われる。「特に、精神的に苦しかったですね」と、理絵さんは当時を振り返る。

 PTSDでは、原因となった衝撃的体験が悪夢として表れ、その結果、睡眠障害を起こすことが多い。回数の差こそあれ、悪夢は多くの人が経験するが、「不安障害」という疾病グループに入るこの病気は、根底に強い不安感、恐怖感があるため、日常生活に支障が出てくるという特徴がある。

 病気として認められてから歴史が浅いこともあって、PTSD発症のメカニズムについてはまだ不明なことが多い。同じような衝撃的体験をしても、すべての人が発症するわけではない。  

国立病院機構災害医療センターの調査によると、東日本大震災で派遣された医師や看護婦の中では、被災地で経験した精神的苦痛が大きいほどPTSDの症状が出ていた。また、犯罪、事故、災害などによる強い心理的ショック(トラウマ)体験が過去にあると、新たなトラウマに対していっそう弱くなり、PTSDになりやすいことも分かっている。  「たとえば、レイプ被害者のなかでも、過去に一度レイプを受けたことがある人は、PTSD発症率が3倍になるという報告もあります」(『よくわかるパニック障害・PTSD』主婦の友社)  理絵さんのように、拉致監禁による強制改宗という強い精神的苦痛を2度も経験すれば、PTSDを発症するのは普通と考えるべきだろう。

(「宗教の自由」取材班)

世界日報特集:〝拉致監禁″の連鎖

  • 我らの不快な隣人

    ルポライター米本和広氏が、拉致監禁によって引き起こされたPTSD被害の実態をレポート。

    ►第6章 掲載
  • 人さらいからの脱出

    世にも恐ろしい「人さらい事件」に関わった弁護士、牧師、マスコミ人らの非道な実態を実名で白日のもとにさらす。

    ►書籍紹介
  • 日本収容所列島

    いまなお続く統一教会信者への拉致監禁。小冊子やパンフレット、HP等で告知してきた内容をまとめました。

    ►書籍紹介

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