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2012年5月20日

趣意書(6)-字義を勝手に“創作”する福士裁判官 /火の粉を払え ルポライター米本和広blog


ストーカー事件の真相(21) 

宇佐美氏控訴の趣意書(6)-法令適用の誤り・量刑不当 

 今回で趣意書のアップは終ります。
 何度も繰り返していますが、ストーカー規制法違反の構成要件は「恋愛感情を充足させる目的」「待ち伏せ」を繰り返した(ただし、宇佐美氏が起訴されたケース)という2つです。(後述するが、構成要件はもう1つある) 

「待ち伏せ」:相手の来るのを、隠れて待つこと。〔「ぶせ」は、相手に気付かれないように位置する意〕(『新明解国語辞典』) 

 ストーカー行為と認定された判示1~5で、宇佐美氏が「K氏の来るのを隠れて待っていた」ことがあったでしょうか。NOです。

 判検癒着体質と思われる福士裁判官は、検察に満額回答(有罪判決)を与えるために相当苦吟したようです。 
 しかし、真実追及を旨とする裁判官ゆえ、くさっても「宇佐美は隠れて待っていたのだぁ」と、事実そのものをねじ曲げることはできなかった。そこで、彼はどうしたか。 

 なんと!、国語辞典を無視し、「待ち伏せ」の字義を“創作”した!のです。 

 ちなみに、拉致監禁を容認している有田芳生国会議員(政権政党に所属。いまだコメンテーター気分)は、私のことを「統一教会の御用ライター」だという根拠(?)をブログで詳述しました。しかし、その根拠が批判され危うくなると、なんと辞書を改竄!してしまったのです。
 どうも、権力に近いところにいる人たちは自己を正当化するためには、国語辞典の権威など関係ないようです。

 末尾に私の総評を載せました。最後まで目を通していただけたら幸いです。

*1 控訴趣意書は原文のママだが、適宜、改行、行空けを行い、一部の文字をゴチックにした。 
*2 目次にある頁数を趣意書に生かした。
*3 告訴人の固有名詞だけはイニシャル(K)とした。 
*4 四角で囲ったところは、管理人の注釈。一部、敬称を略した。 
*5 下線は、管理人が注目した記述。

目 次 

第1 はじめに……1頁 
1 本件控訴の概要・・・・・・1頁 
2 被告人の主観に関連する背景事情の用語説明……1頁 

第2 訴訟手続の法令違反……2頁 
1 証拠調べ手続きに関する不服(弁護人請求証拠の不採用)……2頁 
2 訴訟指揮に関する不服(弁護人に対する尋問制限)……3頁
3 審理不尽……4頁 

(上記は「訴訟手続きの法令違反」を参照のこと) 

第3 原判決の認定事実の中の事実誤認……5頁 
1 原判決「犯行に至る経緯等」の①乃至⑭の記載中の事実誤認……5頁 
(1) 認定事実③について……6頁 
(2) 認定事実④について……6頁 
(3) 認定事実⑤について……7頁 
(4) 認定事実⑥について……7頁 
(5) 認定事実⑧について……8頁 
(6) 認定事実⑨について……9頁 
(7) 認定事実⑭について……9頁 
(8) 判決への影響……10頁 

(上記は「認定事実の中の事実誤認」)を参照のこと) 

2 原判決の判示1乃至5の各行為についての犯行状況の記載中の事実誤認……10頁 
(1) 判示1の行為の犯行状況……11頁 
(2) 判示2の行為の犯行状況……12頁 
(3) 判示3の行為の犯行状況……13頁 
(4) 判示4の行為の犯行状況……14頁 
(5) 判示5の行為の犯行状況……14頁 
(6) 判決への影響……15頁 

(上記は「認定事実の中の事実誤認を参照のこと) 

第4 原審証拠上認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認……15頁 
1 「被告人にはKの本心が分からなかった」と認定すべきこと……15頁 
(1) 被告人の認識(総論)……15頁 
(2) 認定事実①②関連……16頁 
(3) 認定事実④関連……17頁 
(4) 認定事実⑥関連……18頁 
(5) 認定事実⑦⑬関連……18頁 
(6) 認定事実⑧関連……20頁 
(7) 認定事実⑩関連……21頁 
(8) 認定事実⑪関連……21頁 

(上記は 「認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認」を参照のこと) 

2 判示各行為は恋愛感情充足目的の「待ち伏せ」にあたらないこと……22頁 
(1) 総論……22頁 
(2) 判示1の行為時の認識……23頁 
(3) 判示2の行為時の認識……25頁 
(4) 判示3の行為時の認識……26頁 
(5) 判示4の行為時の認識……28頁 
(6) 判示5前段の行為時の認識……31頁 
(7) 判示5後段の行為時の認識……33頁 
(8) 認識の認定に関する原判決の誤り……35頁 
(9) 方法について……36頁 

(上記は「認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認」を参照のこと) 

第5 法令適用の誤り……36頁 
1 恋愛感情充足目的の解釈……36頁 
2 「待ち伏せ」の解釈……37頁 
3 「不安を覚えさせる方法」の認識……38頁 
4 ストーカー規制法を適用すべき事案ではないこと……39頁 

第6 量刑不当……40頁 
1 動機の点……40頁 
2 手段方法と結果の点……41頁
 

今回アップしたのはゴチックの部分。


第5 法令適用の誤り 

 原判決は,以下のとおり,ストーカー規制法の解釈を誤っており,被告人には同法違反を適用すべきでないところを適用した誤りがあるというべきである。

 1 原判決の「恋愛感情を充足する目的」の解釈について 

 前記第4の2の(1)で述べた通り,原判決は,経緯において誤った事実を前提にしながら, 

「Kの父親の立ち回り先に,Kが所在するものと考え,Kの父親の車に取り付けたGPSの位置情報をもとにKの居場所を探していたのであるから,Kの父親の立ち回り先と思われる場所に出かけてその場で様子をうかがうなどの判示各行為は,Kと会うなどして,その様子を観察し,さらには,機会があればKと話をするなどして,Kと会いたい,Kとの関係を修復したいというKに対する恋愛感情を充足する目的で行われたもの」 <36頁> 

 
とし,判示各行為が,ストーカー規制法2条1項1号の「待ち伏せ」に当たると認定している。 

 この認定によれば,原判決のいう恋愛感情充足目的とは, 
「Kと会うなどしてその様子を確認し,さらには,機会があればKと話をするなどして,Kと会いたい,Kとの関係を修復したい」 
 という目的であり, 
「機会があれば・・・会いたい,関係修復したい」 
 などという余りにも漠然とした仮定の条件をつけた「思い」までも刑事処罰の対象としているような解釈と認定である。 

 本来,恋愛感情に由来する行為は,憲法上の個人の尊厳の趣旨からも保障こそされ,刑事処罰の対象とすべきではないところ,近年増加してきた悪質なストーカー被害に対応し,危害の発生防止や国民の安全・平穏な生活に資するために,やむをえず制定されたのがストーカー規制法であり,その解釈適用にあたっては,限定性や明確性がなければ,かえってストーカー規制法適用による人権侵害が生じることになる。 

 このような観点に鑑みれば,恋愛感情充足目的について,少なくとも仮定的な要素は入れずに,できるだけ明確な解釈をすべきところ,原判決のいう恋愛感情充足目的は,ストーカー規制法を適用するための目的としては,あまりに漠然とし過ぎた不明確な目的であり,同法の趣旨に反する解釈をしているというべきである。 


2 ストーカー規制法上の「待ち伏せ」の解釈について 

 原審において,弁護人は,ストーカー規制法上の「待ち伏せ」の意義として, 
①相手方が来る又は来るかもしれないと認識もしくは予想して, 
特定の場所において隠れて待つことを意味し,ことにストーカー規制法における「待ち伏せ」は,それが恋愛感情等を表明する行為として行われるという性質上, 
③相手方に対して話しかける等,自らの気持ちを表明する意思(以下「話しかける意思」という)が必要と解すべきである 
 と主張した。 

 これに対し,原判決は,まず,上記②の要件につき, 
「ストーカー規制法の目的及び保護法益に照らせば,待ち伏せ行為は,相手方が予期せぬ場所や状況のもとで,相手方が行為者の姿を認識しうる状態で相手方が来るのを待つことをいうものと解され,必ずしも物理的に姿を隠す必要はないし,行為者において相手方の姿を実際に確認することも必要でない」 
とし, 

 上記③の要件につき, 
「恋愛感情を表明する手段は,話しかけるという積極的な行為に限られるものではなく,態度や行動による場合も含まれるのであり,また,ストーカー規制法2条1項1号が,つきまとい行為,相手方が通常所在する場所の付近における見張り行為等と併せて待ち伏せ行為を列挙している趣旨からすると,恋愛感情を充足する目的で行われる待ち伏せ行為は,恋愛感情の表れとしての待ち伏せ行為をいい,自らの意思を表明する意思が必要と解すべきものではない」 
 として,<37頁> 
弁護人の主張を採用し得ないとした。 

 しかし,一般に,国語辞典による「待ち伏せ」の言葉の意味は, 
「不意を襲うために目指す相手の来るのを隠れて待つこと」 
「隠れていてめざす相手の来るのを待つこと」 
 などとされ,「隠れて待つ」という意味が含まれている。 

 他方,ストーカー規制法上,「待ち伏せ」という行為について,特別な定義規定は設けられていないため,刑事法規厳格解釈の原則に則り,「待ち伏せ」の意義は,一般用語的な理解を前提として解釈されるべきである。 
 原判決は,上記②の要件につき,「必ずしも物理的に姿を隠す必要はない」とするが,かかる解釈は,一般的に,「隠れて待つ」という意味を含む「待ち伏せ」という言葉について,この意味を不要とする拡大解釈をすることになり,刑事法規厳格解釈の原則ひいては罪刑法定主義に反する結果になる 。 

「待ち伏せ」に法律上の定義が特段定められていないから、国語辞書にある字義に忠実であらねばならない。それなのに、福士裁判官は「待ち伏せ」の字義には、「必ずしも物理的に姿を隠す」ことは含まれていないという。 
 これは、拡大解釈というより『広辞苑』『大辞林』『新明解辞典』『岩波国語辞典』などなどの国語辞書を無視した「福士流の字義創作」であり、国語学者への挑戦状といってもいい。 

 字句の意味を問う国語の試験問題で、「待ち伏せ」の解として、<待ち伏せ行為は,相手方が予期せぬ場所や状況のもとで,相手方が行為者の姿を認識しうる状態で相手方が来るのを待つことである>と書けば、教師はあたりまえのことだが、×印をつける。 

 福士裁判官は、おそらく呻吟、苦吟したに違いない。(その根拠は、判決文が弁護人の元に届けられたのが控訴締め切り当日だったことだ。異例中の異例である。控訴趣意書(1)を参照) 

「待ち伏せ」を「相手方が行為者の姿を認識しうる状態で相手方が来るのを待つ」とするだけでは、たんなる「待つ」の字義に含まれてしまう。それゆえ、「相手方が予期せぬ場所や状況のもとで」という条件をつけたのだろう。 

 しかしながら、「待つ」の字義は「来るはずの人や物事を迎えようとして時を過ごす」(『広辞苑』)とされているだけで、一切の条件はつけられていない。 
 すなわち、待たれる人にとって、待つ人が予期せぬ場所や状況のもとに居ようが居まいが、待つ人の姿を認識しうる状態にあろうがなかろが、「待つ」の意味には何の関係ないことである。 

 相手が自分の予期せぬ場所で待っているなんて、日常的にあること。 
「あら、こんなところで待ってたの」 
 恋人(ないし恋人にしたい相手)に情熱を示すために、あえて恋人が予期せぬ場所で、花束を持って待つ。こんな体験は読者にもあろう。 
 それを「待ち伏せ」とは決して言わない。つまり、福士流の「待ち伏せ」は「待つ」と同義語なのである。 

「恋愛感情を充足させる目的で、相手を待つ」(多くの男女があたりまえのようにやっている日常的な行為)だけでは、ストーカー規制法の対象にならない。そのために、Kの供述に合わせて、すなわち「宇佐美が予期せぬ場所や状況下に居た」「その姿を見た」に合わせて、「待ち伏せ」の意味を創作しなければならなかったのである。 

 宇佐美氏が隠れてKを待っていたことは、一度もないのだから! 

(検察の論告文、判決文で、判示1~5を確認してみてください) 

 福士さんと会う機会があったら、「『待つ』と『待ち伏せ』とは、どう違うのですか」と質問してみたいものだ。 

 控訴審で実質的な審理が行われることになっていれば、私が弁護人なら、統一教会関係者などではなく、辞書の執筆者を証人として申請する。それが認められたら、一発で逆転、無罪判決だ。 

 また,上記③の要件については,ストーカー規制法上の「待ち伏せ」の行為である以上,恋愛感情等を充足する目的でなされる待ち伏せ行為でなければならないことはいうまでもなく,一方,原判決も,恋愛感情充足目的につき, 

「機会があればKと話をするなどして,Kと会いたい,Kとの関係を修復したい」 

 ということを上記目的の内容としていることからも,相手方に話しかける等,自らの気持ちの表明をする意思が当然必要と解すべきである。 

 この点,原判決は,恋愛感情の表れとしての待ち伏せ行為をいい,意思表明の意思は不要とするが,そのような解釈は極めて不明瞭であり,刑事法規厳格解釈の原則にも反するというべきである。 

 聡明で想像力のある読者なら、「待ち伏せ」に「意思表明の意思は不要」とする福士裁判官の解釈がいかにトンデモナイかが理解できるはず。 

 用例1:容疑者AがX地点を通過するのを確認するために、刑事はひたすら待っていた。 
 この場合、刑事はX地点を通過した容疑者に「意思を表明する」必要はない。意思を表明すれば、容疑者は逃走するから、トンマな刑事という不名誉な刻印を押されるだけだろう。 
 これとは違い、容疑者を逮捕するために刑事がX地点を見張っていた場合、意思表明(逮捕令状をつきつける)しなければ何の意味もない。この場合、「待ち伏せしていた」とするのが、正しい。 

 用例2:父の仇を取るために、2人の子どもは仇が現れるのは待ち伏せしていた。 
 この場合、「やあやあ我こそは・・・」と意思表明する意思がなければ、「待ち伏せ」とは言えず、「現れるのを確認(ないし、観察、見張り)していた」と表現するのが正しい。 

 身を隠して相手を待ち、相手が現れたら意思を表明する。それが待ち伏せというものですぅ~。


 そもそも,ストーカー規制法は,その第16条に 
「この法律の適用に当たっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意し,その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用するようなことがあってはならない」 
 と定められており,恋愛感情充足目的という目的自体に曖昧さがあるので,より一層,厳格な解釈を心がけるべきである。

参考サイトは「ストーカー事件の冤罪でお悩みの方もご相談ください」

 よって,上記のような原判決の解釈は,誤っているというべきである。 


3 「行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」の認識 

 原審において,弁護人は,被告人がGPSをKの父親の車に取り付けて位置情報を取得する方法をとったことについて, 
「Kが偽装脱会をしているなら,前記の方法によることもKの承諾が得られるだろうと考えていたので」, 
「行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」であることについての認識認容が無く,ストーカー行為の故意は無かったと言えると主張した。 

 ところが,この点に関し,原判決は,19頁において「被告人には判示各行為がストーカー規制法上の待ち伏せ行為にあたるとの認識に欠けるところはなく,弁護人の上記主張は,そもそも故意の存否に影響を及ぼす事情とは言えないから失当」とした。<38頁> 

 しかし,ストーカー規制法における「行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」は,客観的な構成要件要素の一つである以上,故意の認識対象になるというべきである。 

 よって,故意の存否に影響する部分であり,原判決がそもそも故意の存否に影響を及ぼす事情とは言えないとした解釈には誤りがある。

 このくだりはよくわからなかった。法律専門家のレクチャーを受けてようやく理解できたが、解説は末尾に記す。ここでは聞き慣れない「故意の存否」「故意の認識対象」という法律用語を頭に入れ、先に進んでもらいたい。

 4 ストーカー規制法を適用すべき事案ではないこと 

 元来,ストーカー規制法は, 
恋愛感情その他の好意の感情等を表明するなどの行為のうち,相手方の身体の安全,住居等の平穏若しくは名誉が害され,又は行動の自由が著しく害される不安をおぼえさせるような方法により行われる社会的に逸脱したつきまとい等の行為を規制の対象とした上で, 
その中でも相手方に対する法益侵害が重大で,刑罰による抑制が必要な場合に限って,相手方の処罰意思に基づき刑罰を科すこととしたものであり(最判平成15年12月11日判タ1141号132頁), 

 同法を適用すべき典型的なケースとしては,相手方から交際拒絶の意思を明確に伝えられたにもかかわらず,自らの恋愛感情等を満たすためだけに,電話やメール,手紙等による連絡を繰り返したり,つきまといや待ち伏せ等をして交際や復縁を要求したりする行為をする場合である。 

 しかしながら,本件は,被告人と親密な交際をしながら結婚にも前向きな態度を示していたKが,突然,行方不明になり,それ以降,同人から被告人に対する直接的な連絡が一切ないなか,被告人が,Kの身を心配する共に,Kの居場所を捜してその本心を確認したいという思いから行った行為であり,前記のストーカー規制法が規制すべき事案とは明らかに異なるものである。 

 つまり,本件一連の行為は,Kが被告人に対して,自らの気持ちや考えを,誠実に,直接的かつ明確に伝えなかったがゆえに,被告人にはKの本心がわからず,意思確認の必要に迫られて,やむなく行った行為なのであり,いわば,Kの不誠実な対応が招いた事案とも言える。 

 もともと,ストーカー規制法は,前記のとおり,第16条が置かれており,さらに,適用上の留意事項として, 
「法の適用にあたっては,国民の権利を不当に侵害しないように留意し,その本来の目的を逸脱して他の目的のためにこれを濫用することがあってはならないこととされている。 
 法第2条第1項各号の行為の中には,日常生活において,容易に行われやすいものも含まれており,法の運用いかんによっては,人権侵害との非難を受けるおそれがあるため,法の適切な運用に留意すること」 
と定められた通達も出されている(平成21年3月30日,丙生企発第31号)。 

 通達には 「法第2条第1項各号の行為の中には」と記されているだけのようで、どの行為のことを指しているかわからない。おそらく➊号の一部、「住居、勤務先、学校その他その通常所在する場所の付近において見張りし」のことを念頭に置いたものだろう。 
 確かに、相手の女性を見張っているだけで刑罰を課せられたのであれば、若き男女からすればたまったものではない。 

 見張りのケースとは違うが、法の適用を理解してもらいために、比較的宇佐美氏の行為と近い具体例をあげておく。 
 相談事例: 3年間つきあって結婚を考えていた女性から振られてしまいました。その理由が理解できず、何度も電話してもつかまらないので、職場や自宅近くで待ち伏せをしていたら、「ストーカー規制法で刑事告訴できるのよ」と言われてしまいました。法律を見ると私はたしかにストーカーといわれそうですが、彼女を困らせる気はないのです。それでもストーカー規制法で罪に問われることになるのでしょうか。 

 回答: ストーカー規制法により処罰される可能性がないとはいえませんが、あなたの主張が認められれば罪に問われることはないでしょう。 (後略) 
 (『ストーカー規制法解説』(三省堂)。151~152頁。興味がある方は、図書館で目を通してください) 


 それにもかかわらず,まさに,本件は,本来生活安全課の担当であるにもかかわらず,なぜか公安が被告人を逮捕 しており,法が,処罰対象とした恋愛感情等を充足させる目的の行為とは,全く質の異なる行為であったにもかかわらず,16条の趣旨に反して,ストーカー規制法が不当<39頁> 
に適用されたというべきであり,誠に遺憾である。 


第6 量刑不当 

 これまで述べたとおり,本件において被告人は,一貫して無罪を主張するが,仮に有罪であるとしても,後記のとおり,原判決の挙げる「量刑の理由」には誤りがあるため,被告人に対し,懲役3月及び執行猶予4年を言い渡した原判決は,刑の量定が重きに失するため,破棄されるべきである。 

 1 動機の点 

 原判決は, 
「被告人は,被害者が被告人に対する恋愛感情を失い,結婚する意思もなくなったことを十分に分かっていただけでなく,教会関係者からも諦めるしかないと説得されていたにもかかわらず,被害者に対する恋愛感情を抑えることができず,被害者に会いたい,被害者との関係を修復したいなどと考え,執拗に待ち伏せ行為を繰り返し,・・・被害者に心情を思いやることのない身勝手な動機に酌量の余地はない」 
 とした。 

 しかし,既に述べた通り,被告人は,Kの身を心配し,また,Kの本心が分からなかったためにK本人に対し直接の意思確認をすべくKを捜していたのであり,Kの本心が分からなかったことにつき合理的な理由があったのである。 
 また,統一教会の関係者はKの結婚意思がないと分かって諦めるしかないと説得したのではないことも,既に述べたところである。 

 よって,被告人に身勝手な動機があったとする原判決は明らかに事実誤認である。 

 他方,Kは,被告人がKのことを拉致監禁されたのではないかと心配していることも,偽装脱会を疑いずっと捜し続けていることもわかっていながら,一度も被告人と直接の連絡をとることがなかったのである。 

 具体的に言えば,原判決4頁の②に認定されているとおり,実家に帰省直後,被告人からの電話やメールに応答せず,被告人との連絡を絶ち,同5頁の⑤や同7頁の⑨において認定された被告人のメールに対しても返信せず,さらには,判示1,2,3の時,被告人を見たというが,その時も拒絶の意思を示すことはなかった判示4の後ですら,警察に相談に行ったにも拘わらず,被告人に対するストーカー被害を訴えて警察から警告してもらうなどの手続きを取っていない 

 これは重要な指摘である。 事件の全体像を知る上で本質的なことでもある。 
「ストーカー規制法」は法律名からしてもわかる通り、処罰法ではなく予防法である。 
 この法律は桶川ストーカー殺人事件を受けて、2000年5月の第147通常国会で制定された。 
 <法律さえがあれば、殺人事件を未然に食い止めることができたのに>という問題意識が、与野党を問わず全国会議員の間で共有されたからである。 

 法律のポイントは、被害者から相談を受けた警察に「警告」「禁止」の指示を与えることができるようにした点にある。 
 図式化すれば、最初は警告、それでもストーカー的行為をやめなれば禁止命令を出す。それでもなおストーカー行為がやまなければ逮捕し、刑事罰を化す-というチャートである。 

 今回の事件を鑑みるに、どうして不安、恐怖に感じたと法廷で訴えていたKとKの母親が相談した荻窪警察署員に、宇佐美氏に何らかの予防措置を取って欲しいと言わなかったのか。 
 これが最大の謎であり、Kらの不自然、不可解なところである。 
 逆に言えば、荻窪警察署員はKたちに、「私たちには宇佐美さんに警告、禁止命令することはできますよ」と、アドバイスしなかったのか。実に不可解である。 

 ちなみに、2011年の警告件数は1288件、禁止命令は55件である。 
http://sankei.jp.msn.com/affairs/news/120322/crm12032210300003-n1.htm 

 警視庁のサイト「ストーカー規制法」の解説を引用しておく。 

警察署では、あなたを守ることを最優先に考えて相談体制を整えています。つきまとい等をされたら、すぐにあなたの自宅の最寄りの警察署(警視庁ストーカー対策室)にご相談ください。あなたの申出に応じて、「つきまとい等」を繰り返している相手方に警察署長等から「ストーカー行為をやめなさい」と警告することができます。さらに、警告に従わないで相手方がつきまとい等をした場合は、東京都公安委員会が「その行為はやめなさい」と禁止命令を行うことができます。禁止命令に違反して「ストーカー行為」をすると、1年以下の懲役又は100万円以下の罰金が科されます。

 どうして、荻窪警察署と警視庁公安部は、警視庁の都民への説明を無視し、すなわち警告、禁止命令を出すことなく、宇佐美氏をいきなり逮捕したのか。 
 賢明な監禁諸派の諸兄諸姉におかれましても、事件の構造が透けて見えてくると思うのですが、いかがでしょうか。 

 私は次のように推測する。 
 Kと宮村らから相談を受けた時点で、統一教会が絡んだ事件だと知った公安警察(渋谷・新世事件に登場した刑事を中心に)に、いきなりの逮捕、報道発表というシナリオが浮かび、そのためにあえて警告、禁止の措置を取らせなかった(いわゆる泳がせ作戦。これは規制法の趣旨に反する)。 
 これが事件の真相だとすれば、逮捕直後から宇佐美=ストーカー犯を流し続けた国会議員の有田は、権力のお先棒かつぎと評されても、当然のことだろう。

 つまり,Kは,被告人に対して直接意思表示をする機会はあったし可能だったにもかかわらず,婚約者だった者として被告人の心配や疑問をきちんと解消するための誠意ある行動は一切とらなかったのであり,判示各行為の際に被告人のことを見て怖かったと供述する割に,実際にはストーカー被害を訴えることはしていなかったのである。このように被告人の判示各行為は,K自らが招いたとも言いうる側面があるところ,それでも被告人は,自分の行為のために不安を感じたとしたら申し訳なかった旨述べた。 <40頁> 

 かかる事情は,被告人に有利な事情として酌量すべきである。 
  
2 手段方法と結果の点 
  
 原判決は,被告人が 
「被害者の父親の車にGPSを取り付け,位置情報を取得し,被害者の居場所を突き止めるなどしていた」として,その方法につき,「周到かつ巧妙であるばかりか卑劣である」とし,「被害者が長期間に渡って行動の自由やプライバシーを侵害されたばかりか,不安と恐怖を感じて過ごさざるを得なかったものであり,また,被害者のみならずその家族にも様々な影響や被害が及んでいるのであって,結果も軽視し得ない」 
 とする。 

 しかし,そもそも,被告人は,Kが行方不明になった後,Kの家族に対して誠実な手紙や訪問をもって,正式な婚約者として,真面目に話合いの申し入れをしたにもかかわらず,Kの家族は,被告人に対し,一切誠実な対応をすることなく,門前払いに終始した。 
 特に,Kの両親は,被告人のことを,自分の娘が一時は真剣に結婚しようとしていたことを承知しつつ,いわば,二人の仲を引き裂いた上,その後も全く,被告人に対し,Kの状況を説明しようとしなかったのである。 

 その結果,被告人は,Kに対する意思確認のため,やむをえず,GPSを使ってKを自力で捜すしかないと思うに至ったのであり,かかる経緯に鑑みれば,被告人がGPSを用いたという本件の手段方法には,卑劣と評価されうるような悪質性はないというべきである。 

 また,被告人が利用したGPSには50mの誤差があり,ピンポイントで父親の車の位置がわかるほど精度の高いものではないうえ,あくまで父親の車の位置情報を取得していたのであって,K本人の位置情報ではなく,さらに,KがGPSの存在を知ったのは,判示4の行為の直後であり,発見と同時にそのGPSを取り外したのであるから,Kが被告人のGPSによる方法によって, 
「長期間に渡って行動の自由やプライバシーを侵害され,不安と恐怖を感じて過ごさざるを得なかった」 
 というような結果は,実際にはKに生じたとは言えないというべきである。 

 さらに,原判決は, 
「被害者のみならずその家族にも様々な影響や被害が及んでいるのであって,結果も軽視し得ない」 
 というが,その表現には何も具体性はなく,家族に実害があったとも言えず,むしろ,既に述べたとおり,被告人がGPSを取り付けるに至った経緯に鑑みれば,本件を招いたのは,KのみならずKの両親ともいうべきであって,「結果も軽視し得ない」などと言える立場にはないというべきである。 

 以上より,手段方法・結果に関して,被告人に不利に酌量されるべき事実はないというべきである。

以 上<41頁>



福士判決文の総評


 これで控訴趣意書の全文引用を終えるが、<39頁>の冒頭のところで保留にした故意の存否について説明しておく。判決文全体の総評にも関わることである。 

 これまでブログで、ストーカー行為の構成要件として、(1)恋愛感情を充足させる目的で、(2)待ち伏せ行為を繰り返すこと(待ち伏せは宇佐美氏のケース)としてきたが、実はもう一つある。 

 ストーカー規制法第2条項:この法律において「ストーカー行為」とは、同一の者に対し、つきまとい等(前項1号から第4号までに掲げる行為については、身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法により行われる場合に限る。)を反復してすることをいう。 

 このゴチック部分がもう一つの構成要件となる。 
 構成要件は、殺人とか窃盗といった客観的な構成要件と、主観的構成要件がある。 
 主観的構成要件要素には故意、過失、目的犯における目的などがある。故意のスタンダードな学説によれば、故意があったというためには、客観的な構成要件を認識認容している必要がある。したがって、上記ゴチック部分も、故意の内容として認識認容している必要がある。 
  
 厳密な法律用語を使わないで、本件の例に即して言えば、弁護側は- 
 宇佐美の行為がKにとって、「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」であったことを、宇佐美は認識していたかどうか(故意の存否) 
 -を問題にした。 

 そして、「故意のスタンダードな学説」に基づき、次のように主張した。 
「宇佐美氏はGPSを使う方法が行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法であることを認識していなかったのだから、ストーカー規制法違反の主観的構成要件である故意を満たしていない。よって、宇佐美氏の行為はストーカー行為ではない」 
(宇佐美氏の行為が待ち伏せ行為に該当することを前提(仮の前提)としつつ、それでも「身体の安全~~方法であったことを宇佐美氏は認識していないのだから、ストーカー行為ではない) 

 これに対して、福士裁判官はややトンチンカンなことを判決文に書いている。 
「被告人には判示各行為がストーカー規制法上の待ち伏せ行為にあたるとの認識に欠けるところはなく,弁護人の上記主張は,そもそも故意の存否に影響を及ぼす事情とは言えない」 

 正しく書くなら、「ストーカー行為の認識に欠けるところはなく」であろう。 
 しかし、そのように書かれていても、宇佐美氏がストーカー行為をしているという認識があったことは、検察から提出された証拠には一切なく、また公判でもこのことは一切審理の対象になっていないから、福士裁判官の思いでしかない。 

 このように書いても、やはりわかりにくいだろう。もっとかみ砕いて言えば、こういうことになる。(ただし、待ち伏せ行為があったことを前提とする) 
 AがBに繰り返し待ち伏せ行為を行った。 
 Bはそれを「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」であったとして、告訴する。 
 しかしながら、Bの主張はきわめて主観的である。それがそのまま認められるのは不公平だし、冤罪につながる。 
 そのためには、Aがそのような方法であったことを認識(故意の認識)していたかどうか-という歯止めが必要である。 
 ただし、認識していなかったと主張することも、Aの主観に過ぎない。それゆえ、客観的な事実関係(証拠)から、判断されるべきである。 
 ところが、福士裁判官は端から、故意の認識など必要ないと、弁護側の主張を門前払いし、客観的に判断することを避けたのである。 

 両者の主張を繰り返す。 
 被告人の主張は、判示1~判示4の行為は、Kの婚約破棄の意思が本物かどうかを確かめる目的で、Kの監禁場所を探していた。そのために、Kの父親の車にGPSを設置し、車が頻繁に停車するしている場所を観察していただけである。判示5は偶然、サウナでKと会い、Kに声をかけただけ-というものであった。 
 告訴人の主張は、KはKの予期せぬ場所で被告人の姿を見た・待ち伏せされた。恐かった-というものであった。

 この2つの主張を比較検討すれば、宇佐美氏の行為がKに「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」だったとは、少なくとも宇佐美氏がそのような方法であることを認識していたとは到底言えないだろう。  

 この認識のことが最近、報道されたことがある。民主党小沢元代表の事件である。 

 石川議員が政治資金出資報告書に虚偽記載をした(地裁の認定。控訴中)。争点となったのは、虚偽記載を小沢氏が「了承」(認識)していたかどうかであった。 
 東京地裁は「小沢氏は虚偽記載を認識できなかった可能性がある」として無罪を言い渡した。 
 検察側(指定弁護士)と弁護側が「認識」の有無をめぐって法廷で争っているとき、壇上の裁判官が「認識の有無」は本件とは関係ないとばかりの訴訟指揮をしたら、当事者たちは目を白黒させるだろう。福士裁判官はそれと同じ趣旨のことを判決文で書いてのけたのである。


 福士判決を総括しよう。 

 宇佐美氏がK氏に「恋愛感情」を抱いていたとしても、宇佐美氏の行為が「恋愛感情を充足させる目的」(婚約破棄を撤回させ、結婚する目的)だったことは、まるで立証されていない。つまり、ストーカー行為の構成要件を満たしていない。 

 宇佐美氏がK氏へのを待ち伏せを繰り返した事実はない。つまり、ストーカー行為の構成要件を満たしていない。 

 宇佐美氏の行為がKに「身体の安全、住居等の平穏若しくは名誉が害され、又は行動の自由が著しく害される不安を覚えさせるような方法」だったこと、少なくとも宇佐美氏がそのような方法であることを認識していたこと(故意)は、まるで立証されていない。つまり、ストーカー行為の構成要件を満たしていない。 

 宇佐美氏の行為は、ストーカー規制法違反となる3つの構成要件のいずれも満たしていないのだ。 

 しかるに、福士裁判官は何ら立証することもなく、ないしは証拠のごく一部を恣意的に選択し、宇佐美氏の行為をストーカーとして断じているのだ。 犯罪の要件を満たして
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