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2012年1月11日

“拉致監禁”の連鎖 パートⅥ「『ストーカー』裁判の記録」を終えて(4)


 
職業的改宗屋の宮村峻氏


強制脱会の背景を考慮せず

 公判でも拉致監禁問題でもキーパーソンである職業的改宗屋の宮村峻氏は、第2回公判で検察側の証人として出廷した。公判の証人尋問では、証言の信用性を判断するためにも、証人の身元や事件当事者との関係などを明確にする必要がある。これが基本中の基本なのに、なぜか検察はそれをしなかった。Kさんの失跡当日、Kさんの前に現れた宮村氏について、その身元を明らかにしなかったのだ。

 判決では、宮村証言をそのまま取り入れ「(宇佐美は)宮村に対し、Kに会いたい、話をさせてほしい、結婚したいなどと話したが、後日、宮村は、Kの意思を確認した上、Kには被告人と会う意思がない旨被告人に伝えた」としている。あたかも宮村氏がKさんの代理人として、おもむろにKさんの意向を伝えたかのような見解を採っているが、検証すれば事実はまったく違うことが分かるはずだ。

 宇佐美氏は、Kさんの父親が、強制改宗のための監禁場所に使われ、宮村氏が出入りしている杉並区のマンションに入っていくのを見つけ、Kさんの拉致監禁による強制改宗がいよいよ確かなものとなったと確信した。その後、脱会した元信者たちが居住していたマンションを訪ね、宮村氏と遭遇した。

 そこで宇佐美氏が「Kさんに会いたい」と宮村氏に言ったのは、脱会屋に対して、被害者として激しく非難した時に出た言葉である。それに対して、脱会が確実と信じられるまでは、決して本人を救援者に会わせないのが、強制脱会を推し進める際にとる宮村氏のいつものやり口である。

 にもかかわらず、判決では、こういった背景をすっ飛ばし、有罪の判断に傾いている。ここでも「(宮村氏は)Kさんの意向を伝え、(宇佐美氏は)Kさんの意向を知っていたのに、恋愛感情を抑えきれず…」と、くり返している。

 一方、「待ち伏せ」について判決は拡大解釈で、宇佐美氏がKさんを捜し出す行為をすべて「待ち伏せ」行為と決めつける、極めて一方的な断定を下している。「待ち伏せ」に対しての法的解釈は定まっていないが、一般的に「相手の不意をつくために隠れていてその来るのを待つこと」(広辞苑)と解釈される。

 それを判決文では「待ち伏せ行為は、相手方が予期せぬ場所や状況の下で、相手方が行為者の姿を認識し得る状態で相手方が来るのを待つことをいうものと解され、必ずしも物理的に姿を隠す必要はないし、行為者において相手方の姿を実際に確認することも必要ではない」と、独自の拡大解釈を押し付けている。常識的に認められる解釈とかけ離れていることは明らかだ。

 判決は五つの公訴事実がまずありきで、待ち伏せの解釈を拡大していったという他ない。いわば、足に靴を合わせるのではなく、靴に足を合わすような作業が繰り返されたのだ。

 また、福士裁判長は、判決文を読み上げるとき、行為の主体(文章的には主語)を間違えて読み、改めて読み直すことを何度も繰り返したり、読み詰まったりした。そのため傍聴者には聞き取りにくいことこの上なく、メモをとって文脈を理解することが困難なほどだった。汚い下書きを読み下したからとも聞くが、厳粛な判決言い渡しにそぐわない、あまりにもお粗末な朗読だったのである。

 なお旧臘27日の判決文が、弁護側に届いたのは、年が開けて11日になってから。刑事裁判の控訴期間は判決後14日で、宇佐美氏は7日に控訴した。あわただしい暮れと正月を間にはさみ、判決文もない中で、弁護側は判決内容の吟味もできないまま対応せざるを得なかったわけだ。それで法的に何ら問題ないといっても、実態として弁護側を不利に押しやっている不公平は否定できまい。一般常識とはかけ離れた司法のあり方が批判されるが、それはこんなところにも如実に現れている。

=終わり=

(「宗教の自由」取材班=編集委員・堀本和博、同・片上晴彦、同・森田清策、社会部・岩城喜之)

世界日報〝拉致監禁″の連鎖
http://www.worldtimes.co.jp/special2/ratikankin/main5.html

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