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“拉致監禁”の連鎖 パートⅥ「『ストーカー』裁判の記録」を終えて(3)
検察が公訴事実の一つとして挙げた新宿区新宿のコインパーキングの現場
弁護側の証言を曲解して解釈
宇佐美氏がKさんの婚約解消の意思を承知していたのかどうか――。公判では重要な争点の一つだった。弁護側は「(宇佐美氏は)K氏本人に直接意思確認をするまでは、K氏との婚約関係が破棄されたとは考えていなかった」(弁論要旨)と主張した。
しかし、判決ではこれを退け「被告人は、被害者が(中略)結婚する意思もなくなったことを十分に分かっていた」と断じた。その判断の大きな根拠となったのが、弁護側の証人で、Kさんが通った教会の同僚で青年部長だった中務伸人氏の証言内容だった。
「中務は、長い間捜していたがKと会うことができず、これ以上何をすればいいのかと感じ、その頃澤田(注・教会での宇佐美氏の相談者)に『難しい』と伝え、また被告人に対しては『あきらめるしかない。気持ちの整理を付けるしかない』と伝えた」(判決文)というのがその個所である。
中務氏の証言を引用する形で、話をあとにつなげて「教会関係者からもあきらめるしかないなどと説得されていたにもかかわらず、被害者に対する恋愛感情を抑えることができず、被害者に会いたい、被害者との関係を修復したいなどと考え、執拗に待ち伏せ行為を繰り返し」ストーカー行為があったと断じている。
ところが「あきらめるしかない」と言った中務証言の実際の意味は、判決の解釈とは全く異なる。
弁護士 諦めるしかないとはどういった意味で言ったんですか。
中務 (前略)ここまで捜したのもありましたし、また教会側からこのような行動をしているということを向こう側にばれてしまったら、より(Kさんに対する)監視が強くなってしまいますし、今は少し時間を空けよう、待つしかないという、そういう意味で伝えました(後略)。
弁護士 その話をしたときの被告人はどのような様子でしたか。
中務 やはり、婚約者を失った立場として、自分は本人から直接聞かないとそれは次に向かえないというような、だから、一日も早く捜し出さなきゃならないという、そういう焦る思い、そのような様子でした。(第5回公判)
以上の証言を正面からそのまま受け止めれば、判決にあるように「Kさんの婚約解消の意思は変わらないから、Kさんをあきらめろ」と教会関係者が忠告したにもかかわらず、「(被告人は)被害者に対する恋愛感情を抑えることができず、執拗に待ち伏せ行為を繰り返し」たということにはならない。判決と同じ形式で書き換えると、「今のところ捜し出す手掛かりはないので、捜すのをあきらめろ」との忠告に対し、宇佐美氏は「(Kさん)本人が姿を見せない限りは、ほんとうに脱会したかどうかは分からない。一日も早く本人から直接聞かないとと思った」というのが自然な合理的解釈である。
福士利博裁判長の判断の手掛かりは、中務証言を曲解したことによって導かれたものだった。なぜ、福士裁判長は、直截的に中務証言を取り入れず、まったく逆の解釈をしたのだろうか。
公判では、ストーカー規制法の対象となる「恋愛感情の充足」や「関係修復のための行為」の直接的な証拠が見いだせなかった。そのため、直接、被害者を知る弁護側証人の証言に飛びつき、こじつけた、ということではないのか。
今回の「ストーカー事案」について、統一教会絡みの事件として、新聞やテレビはその基本である報道内容の正確さよりも、一部週刊誌のような興味本位の取り上げ方に突っ走った。裁判はそんな偏見が瀰漫した中で行われ、判断が下されたと言うべきである。
(「宗教の自由」取材班)
世界日報〝拉致監禁″の連鎖
http://www.worldtimes.co.jp/special2/ratikankin/main5.html