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“拉致監禁”の連鎖 パートⅥ「『ストーカー』裁判の記録」を終えて(1)
宇佐美氏の判決日に傍聴席を求めて集まった人たち=昨年12月27日、東京地裁
検察側の筋書きなぞる不当判決
判決 主文
被告人を懲役3月に処する。
この裁判が確定した日から4年間その刑の執行を猶予する。
昨年12月27日、東京地裁531号法廷。約7カ月、10回にわたった何十時間もの言葉の応酬の結果が、ごく単純な数字に凝結されて出た。報道する者としては、判決を聞く直前の緊張、直後のカタルシスは裁判傍聴の時と同じだが、大いに不満が残った。
「自己の目的を達成するためには手段を選ばないという歪んだ価値観さえうかがわれ、その法規範意識の欠如は著しい」と述べた福士利博裁判長。
だが、公判で、裁判官と検察官がまるで示し合わせているのでは、と疑うような光景を何度も見てきた記者としては、行司役のこの判断も納得し難い。
――判決には、法律の専門知識が要る。しかし、一つ一つの事象に対しては、社会生活における常識的な判断が要る。その事実が積み重ねられ、最後に総合的な高度な法的判断がなされるべきだ。政府の2000年の司法改革で諮問委員の一人が、あるべき司法の姿についてこのように表現していたことを思い出す。
だが、今回の裁判でよく常識が働いていたとは思えない。むしろ世間知とは逆の、狭い司法世界の中でしばしば見られるあうんの呼吸が支配的ではなかったか。
福士裁判長は検察の五つの公訴事実をすべて認め、「機会があればKと話をするなどして、Kと会いたい、Kとの関係を修復したいという被告人のKに対する恋愛感情を充足する目的で行われたもの」とした。その上で、問題の背景にある信教の自由否定につながる拉致監禁問題を素通りした。
弁護側の主張した、Kさんの強制脱会、拉致監禁や偽装脱会などについて「故意の存否に影響を及ぼす事情とは言えない」として、その存在の有無について言及を避けた。審理では証拠採用をはじめとして、この問題に立ち入ることを忌避してきた法廷指揮からすれば、判決を聞く前から宇佐美氏に不利なことは予想されたとも言えよう。
また判決文の「犯行に至る経緯等」の項で、福士裁判長は、検察側証人の証言内容を含め、検察側主張をすべて認める一方、これに反する弁護側証人の証言については、その根拠を示さないまま退け、弁護側主張を顧みることはなかったと言っていい。
検察側の筋書きを丸のみした判決は不当判決と言うべきで、司法改革に背を向けた、司法の自殺との批判も聞かれる。
この判決を受け、宇佐美隆氏は今月6日、東京高裁に控訴した。強制改宗の被害者や支援者などでつくる「全国拉致監禁・強制改宗被害者の会」(被害者の会)は、宇佐美氏の裁判闘争を支援していくことを決めた。
被害者の会会長で、12年5カ月間にわたり監禁されたつらい経験を持つ後藤徹さんは「強制改宗のため拉致監禁された者だけでなく、その配偶者らは孤独な闘いを長期間強いられる。宇佐美さんもその被害者の一人と言える。今回の裁判は、統一教会信者に対する拉致監禁事件の存在について全く論及されておらず、これに何も言わずにおれば今後、拉致監禁の横行を助長する恐れがある」ことを憂い、不当判決を訴え裁判費用などの支援活動を続けていくと決意を語る。
(「宗教の自由」取材班)
世界日報〝拉致監禁″の連鎖
http://www.worldtimes.co.jp/special2/ratikankin/main5.html