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“拉致監禁”の連鎖 パートⅣ、Ⅴを終えて(5) 草の根運動の続行
人権意識高い海外から圧力を
今年1月、東京・新宿で開かれた強制棄教・改宗を目的とした拉致監禁事件糾弾の集会で話すルーク樋口さん |
今年6月、台湾北部の淡水にある真理大学で「CESNUR(新宗教研究センター)」の国際会議が開かれ、世界の新宗教の現状が報告された。拉致監禁事件についてのセッションに出席した1人に、宗教社会学の権威でロンドン大学教授のアイリーン・バーカー氏がいた。
バーカー教授は以前、取材班のインタビューに「新宗教に対して国家レベルで迫害などの不適切な行動がとられないよう、私自身、今も厳しい監視の目を(英国政府などに)向けている」と語った。
宗教迫害について日本政府だけでなく警察、裁判所の対応が鈍い理由として、日本にはバーカー教授のように、世界の人権問題を見据える宗教学者やジャーナリストがあまりにも少ないことが挙げられる。真の人権大国・日本となるには、拉致監禁事件の処理が正当に行われることが最低条件である。
一方、強制棄教・改宗を目的とした拉致監禁事件の問題が世界に知られるようになったものの、拉致監禁をなくすための課題も見えてきた。事件の撲滅を目指すなら、人権意識の高い米国議会下院で日本のマイノリティー宗教弾圧の問題が取り扱われることや、欧州の国連人権理事会で、この問題を議題とする採択や正式表明がなされることが求められる。
そのために今後、米国や欧州の一般市民にも広く、宗教迫害の事実を知らせ、反対運動を支持してくれる人を増やすことが必要だ。ネット利用、イベント、ラリーなど、世界の各地で現地の人たちによるキメの細かい草の根運動を続けるなどあらゆる努力が必要である。
パートⅤ20回の終了後、海外に住む2人の読者から取材班に連絡が入った。2人とも、この問題に関心を持ち、海外でアクションを起こしている。1人は大阪生まれで、米国で「在米拉致監禁経験者の会(SAFE)」を結成し、その責任者をしているルーク樋口さん。
2年前に日本で拉致監禁解放プロジェクトが始まったことを知り、注目した。樋口さん自身、拉致の被害者だったが、遠い昔のことで忘れていた。「強制棄教・改宗を目的とした拉致監禁は深刻な人権侵害事件であり、全米の人たちに知らせることが自らのミッションである」と心が動き、使命を感じたという。
樋口さんは、地元のラジオに出演し、地域の人々に日本の拉致監禁問題を訴えるなどしてきた。しかし、これまで「日本での活動状況が米国に伝わってこなかったし、逆に米国での私たちの活動が日本のメディアに取り上げられることもなかった」。これからは「米国での反対運動を日本のメディアに積極的に広報していきたい」と意気込む。
もう1人はオーストラリア在住の日本人男性(会社員)。ここ数年、ネットで公開された拉致監禁事件の小紙記事を丹念にフォローし、少しずつこの問題の重大性を感じはじめ、関心を深めたという。
そして、今はこの問題について情報提供する自前のホームページを立ち上げた。主に日本から発信された記事を英訳し、豪州をはじめ英語圏の人たちに、日本の拉致監禁問題を知らせている。海外で第2、第3のルーク樋口さんらが現れることを期待したい。
(この項、完)
(「宗教の自由」取材班 編集委員・堀本和博、同・片上晴彦、同・森田清策、社会部・岩城喜之)
過去の記事は世界日報社ホームページでも閲覧できます。
http://www.worldtimes.co.jp/special2/ratikankin/main.html