新着情報
“拉致監禁”の連鎖(157) パートⅥ 一片の「婚約破棄」通知書
(Kさん名義で脱会と祝福破棄の通知書が送られてきた東京都渋谷区の統一教会本部)
スピード化がよしとされ、人の心のドライさにも寛容な社会になったとはいえ、両者間に何の話し合いもないまま、一片の通知書で婚約破棄の通告を済ませようとするのは理解されまい。しかも通知書は宇佐美氏に届いたのでなく、脱会の通告とともに教会本部に送られてきた。それまでの間、婚約者の宇佐美氏には何の音沙汰もなかった。
それからさらに1年後の21年12月末、Kさんからの手紙が宇佐美氏の宮崎県の実家に送られてきた。それを宇佐美氏が見たのは、翌22年8月に実家に帰った時だった。手紙には「貴方に電話をする気はないし、会うつもりもありません。もう私に関わらないでください。迷惑です。今後何かあれば、法的な処置も考えます。さようなら」などとあった。相手のことを考えずに、自らの通告だけを一方的に事務的に伝える内容だった。
Kさんは、第3回公判で、被告弁護人の「なぜ一度も(宇佐美氏に)連絡しなかったのか」という質問に、「何も連絡しないほうが彼も諦めやすくなるんじゃないかというふうに思った」と証言。弁護人が「婚約解消の意思表示になっていない」と追及すると、「宗教上の婚約だということなので、そういう本部への事務処理的な手続きで終わらせたいと思いました」と答えている。
統一教会員に対する強制改宗の人権侵害を追及した著書を持つルポライター米本和広氏は、自身のブログ『火の粉を払え』で、このストーカー事件に言及。前記の婚約問題に触れ、<弁護士を代理人とする婚約破棄の通知文が届き、それで「ハイ、わかりました」というノーテンキな人はこの世にいないだろう>と記している。
その上で、宇佐美氏が必死に婚約者の居所を探す行為について正当性があると解説。逆に<裁判所が有罪判決を下すようなことがあった場合、日本の社会秩序は乱れてしまう>として、その社会的悪影響について次のように論及している。
<なぜなら婚約を誓い、結納まで交わしたあと、別の異性を好きになった場合、なにがしかのお金を払って、弁護士に通知文を書いてもらえば、それで済んでしまうことになるからだ。もし自宅に婚約者が「押しかけ」てくれば、警察に通報し、逮捕してもらえばいいわけだ。こうなると、婚約者は「不当な婚約破棄だ」として損害賠償請求を起こすしかなくなってしまう。そのような社会になっていけば、アメリカのような「訴訟社会になってしまう」>からだ。
婚約や結婚というのは相手あっての約束事であることに変わりない。一片の通知書で一件落着としようとするのは、相手の心、人格を踏みにじる行為と言わなければならない。
(「宗教の自由」取材班)
世界日報〝拉致監禁の連鎖″