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世界日報 ‐“拉致監禁”の連鎖‐ がストーカー事件の真相に迫る連載スタート
「(婚約)指輪はうれしかったです。だいたいいつも着けていました」――そんな間柄だった女性が失跡。婚約者の男性が居所を探し、婚約解消の意思を確かめ一区切りつけたところで、突然、その女性からストーカー容疑で告訴され逮捕、刑事裁判となった。その審理(東京地裁)が終結し、今月27日に判決が出る。この男女2人の葛藤の核心に、統一教会員ら新宗教の信者らが被害に遭っている強制棄教・改宗を目的に行われている拉致監禁問題が横たわっている。傍聴した公判メモなどから事件を検証した。
拉致監禁問題が背景に横たわる「ストーカー事件」で、その公判が行われた東京地方裁判所(東京・霞が関) |
検察と弁護側が真っ向対立 -“拉致監禁”の連鎖(153) パートⅥ‐
「被告人の規範意識の欠如は甚だしく、被告人の刑事責任は重大であり(中略)懲役3月の刑に処するを相当と思料する」(11月8日公判、検察官の論告要旨)
「被告人は、本件公訴事実記載の恋愛感情充足目的及びストーカー行為の故意を有しておらず、また待ち伏せ行為もしていない。すみやかに無罪の判決をすべきである」(同、弁護側弁論要旨)
論告と弁論要旨が真っ向から対立したまま、「ストーカー裁判」の東京地裁での審理が11月8日に終結した。
ストーカー被害に遭ったとして告訴したのは、熱心な統一教会の信者だったが、後に脱会したKさん(36)。被告人は同じ教会員で中古車卸売業を営む宇佐美隆氏(42=逮捕時)。検察側は、失跡したKさんを捜す宇佐美氏の姿をたまたまKさんが目撃したとする5回のケースを、待ち伏せ、ストーカー行為として公訴事実に挙げ追及した。
これに対し弁護側は、宇佐美氏が、拉致監禁された可能性のある婚約者を捜し出し、本心を聞くために奔走したものであり、恋愛感情などを充足する目的ではなかったと反論した。ストーカー犯は行為目的が問われる「目的犯」であり、争点となったのは、その動機についてであった。
宇佐美氏は今年2月7日に逮捕され、荻窪警察署に留置された。この時から、拉致監禁の被害者や支援者らが相次いで同署を訪れ、宇佐美氏に面会し激励した。
平成20(2008)年にKさんが突然に失跡したのは、拉致監禁されたからではないか、という見方が教会内部に行き渡っていた。そして、Kさんの婚約者である宇佐美氏は、この問題に翻弄されている被害者の一人と同情され励まされていたからだ。
公判は5月11日から始まり、傍聴席は毎回、満席となった。拉致監禁被害者や支援者だけでなく、反統一教会グループや拉致監禁に関わる職業的改宗屋、フリージャーナリストらが詰めかけた。拉致監禁の存在自体を否定する人たちにとっても、裁判の成り行きが大いに気になる事件だったのだ。
しかし、公判で拉致監禁問題が十分に追及されたかというと、そうではなかった。
この事件は最初の宇佐美氏の逮捕から、不可解な“黒い霧”に包まれていた。
(「宗教の自由」取材班)