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世界から指弾-日本の人権(20) 欧州の宗教学者らが驚愕
「CESNUR2010国際会議」に臨む後藤徹氏(左端)と、ダン・フェファーマン氏(右端)(昨年9月9日、イタリア・トリノ市のトリノ大学)
「(拉致監禁による強制改宗を)検察が起訴しないのは奇妙なことだと思う。日本では、こういう問題に取り組んできた伝統がないのだろう。ヨーロッパでは、例えばカトリックの修道女になりたいと言う娘に、両親が反対するのは非常に古典的な事例で、その場合、どのようにして女性の宗教的権利を守るべきか、社会全体で長い時間をかけて議論され、方策が確立されてきた」――。
イタリア・トリノに本部を置く「CESNUR(新宗教研究センター)」の創設者・代表理事のマッシモ・イントロヴィニエ氏は、昨年9月9日から3日間にわたりトリノで開かれた国際会議の直後、全国拉致監禁・強制改宗被害者の会代表の後藤徹氏にこう語った。
「変貌する神々-宗教と日常生活」をテーマに開かれた、CESNUR2010国際会議には、新宗教運動を研究する学者ら約150人が参加した。「変貌する新宗教運動」の分科会では、国際宗教自由連合のダン・フェファーマン会長が、日本における強制改宗の状況について発表。続いて後藤氏がパワーポイントを使い、33歳から45歳まで12年5カ月も監禁された想像を絶する体験を語った。
スクリーンに日本同盟基督教団の松永堡智牧師と、職業的脱会屋の宮村峻氏らの顔が大写しされた。「彼らが私の両親を教育して、拉致監禁させたのです。彼らには、謝礼金として法外な金銭が支払われているという多くの証言があります。もはや、これは悪質な『拉致監禁ビジネス』と言っても過言ではありません」と説明した。
「監禁から8年を経たとき、私は抗議のハンガーストライキを決行しました。断食30日目に身の危険を感じて、断食終了を家族に宣言しましたが、流動食しか出されず過酷な食事制裁による虐待が約2年弱続いたのです」と続けた。そして、後藤氏が監禁場所から放り出された後の衰弱著しい写真がアップされると、出席者の間に驚きの嘆息が流れた。
この分科会に参加し、後藤氏の話を聞いていたイントロヴィニエ氏は、後藤氏に「今回のCESNURの会議の中で、あなた方の発表が最も意義のあるものだった」と話し掛けた。欧州では1980年代に根絶された強制改宗が、日本ではいまだに続いている不条理に、会議に参加した欧州の宗教学者らは異口同音に驚愕したのである。
一方、英国内務省などの支援を得て新宗教に関する情報提供機関「インフォーム」を設立したロンドン大学のアイリーン・バーカー教授(宗教社会学)は以前、取材班のインタビューに応え「情報不足によって国家レベルにおいて不適切な行動がとられることのないよう努力している」と語った。国家の宗教迫害の再発を防ぐために、厳しい監視の目を今も向けている、というのである。
欧州諸国が長年の歴史的試練を克服し積み上げてきた、信仰の自由や人権を守る意識や手だてについて、日本政府や治安当局が参考にしたり学ぶべき点は数多くあることを指摘しておきたい。
パートⅤ完
(「宗教の自由」取材班=編集委員・堀本和博、同・片上晴彦、同・森田清策、社会部・岩城喜之)