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世界から指弾-日本の人権(19) 米国では根絶された強制改宗
ICSAが開かれた米・ニュージャージー州のダブル・トゥリーホテル(昨年7月2日)
「私は監禁場所であなたの本を読まされましたよ。…あなたの本は日本における強制改宗のテキストの一つになっていて、拉致監禁を正当化するためにあなたのマインド・コントロール理論が使われている」――。
米国ニュージャージー州フォートリーのホテルで「ICSA(国際カルト研究協会)」の会議が昨年7月2日に開かれ、そのセッション終了直後のこと。参加者の1人、全国拉致監禁・強制改宗被害者の会代表の後藤徹氏(47)が、『マインド・コントロールの恐怖』(恒友出版)の著者スティーブン・ハッサン氏に面と向かってこう迫った。
ICSAは新宗教、新新宗教団体に対し批判的ウォッチャーを自認する団体。米国には、強制改宗を請け負うCAN(カルト警戒網)組織があったが、裁判で断罪され1996(平成8)年に解散命令が出た。それを期に、拉致監禁による強制棄教・改宗が社会から一掃されたのである。
以後、米国最大の“反カルト組織”に浮上してきた団体がICSAだ。その主催会議での両者の対決は因縁めいている。
ところが、後藤氏が斬り込むと、意外にもハッサン氏は「私は既に、自分の本を根拠に強制改宗をするのはやめてほしいという手紙を、日本基督教団宛に出しています」と弁明した。既に、強制改宗には反対する立場に転向したことをあっさり認めたのである。
強制棄教・改宗のための拉致監禁は基本的人権を踏みにじる、と厳しく批判した『現代の宗教迫害史』(ジョン・T・ビアマンズ著)が発刊されたのは1988(昭和63)年。その本に序を寄せた米国NCC(キリスト教協議会)のディーン・M・ケリー氏は「その人の同意なしに完全に支配することができるとする<マインド・コントロール>や<洗脳>あるいは<強制説得>というような(中略)観念のばからしさを証明するために長ったらしい学術的論争は、本来あるべきではない」と書いて衆目を集めた。
米国ではその後、約10年を経て強制改宗が根絶されたのである。
後藤氏に対し、ハッサン氏が強制改宗を否定したことは、大きな意味を持つ。これまでの拉致監禁による強制改宗の手順を見ると、職業的改宗屋や牧師たちは、拉致監禁の実行者である信者の親や親族たちに、少々手荒なことをしなくてはマインド・コントロールは解けないぞ、とはっぱをかけ続け、強制改宗の正当性を強調してきたからだ。
日本の治安当局は、ほとんどのケースで結果的に加害者の弁明を受け入れ、政府もそれに同調してきた。しかし、国際的には、強制改宗の是非についての論争は既に結着が付いているのだ。かつて積極的に強制改宗を支持した“理論家”も、それを否と否定するまでに追い込まれている。
その意味で日本の方が国際基準に後れを取っているのだ。欧米、国連そして隣の韓国からの非難、勧告に対し、日本政府がこれ以上“知らぬ半兵衛”を決めこむことは許されない、と知るべきである。
(「宗教と自由」取材班)
過去の記事は世界日報社ホームページでも閲覧できます。
http://www.worldtimes.co.jp/special2/ratikankin/main.html