新着情報
世界から指弾-日本の人権(6)国家の宗教迫害の様相を指摘
2011年3月13日
“拉致監禁”の連鎖(138)
世界から指弾-日本の人権(6)
国家の宗教迫害の様相を指摘
NY日本総領事館前で昨年10月12日に行った拉致監禁の抗議行動で、被害者の写真を掲げる参加者たち |
「宗教の自由年次報告書」は米国の外交方針を決する上で重要な報告書の一つで、米国務省が毎年、世界に向けて発信している。強制改宗を目的とした拉致監禁問題の記述について、報告書の従来の版と10年版とを比較してみると、大きな違いがある。
第2節のタイトル「信仰の自由の現状」(Status of Religious Freedom)に、09年版から「政府」の文字が加わり、「政府の信仰の自由尊重の現状」(Status of Government Respect for Religious Freedom)となったこと。その「強制改宗」の項の中に「米国市民の中に強制改宗を受けた者はいなかった」という内容が記されていたが、10年版では「家族および職業的強制改宗屋(ディプログラマー)から、同教会から脱会するよう圧力をかけられた信者が数人いたと統一教会から報告があった」と明記されたことである。
米国務省が、国家による宗教迫害という認識で拉致監禁問題を扱った、ということは重大な変化といっていい。
実際、日本の国会では強制改宗を目的とした拉致監禁問題について質問と追及が行われてきた。2000年4月の衆院決算行政委員会で自民党の桧田仁衆院議員(当時)が、また昨年5月には参院決算委員会で自民党の秋元司参院議員(当時)が政府、治安当局にこの問題への対処を質し、公正な取り組みを求めた。
警察庁の田中節夫長官(当時)は、桧田議員の質問に「拉致監禁、暴行傷害などの事件については、たとえ親子、親族間であったとしても、例外なく法の下の平等で厳正に対処する」と答弁。秋元議員の質問には、中井洽国家公安委員長(当時)が「警察官が現場に入った場合、両者(加害者と被害者)を別々に分け、じっくり話を聞いた上で、対処する」と、警察当局の具体的対応に踏み込んで答えている。
ところが、この後も警察や検察、法務当局はその答弁に反した、あるいは無視した対処を行い、助けを求める被害者らの訴えに手を拱いているケースが少なくない。
一方、これも米国務省が毎年発行する「国別人権報告書」であるが、こちらでも、拉致監禁問題を取り上げている。昨年3月11日に公表された09年度版に「『強制改宗』と監禁に関し通報しても当局は取り組んできていないと、継続して報告されている」と記載。07、08年を除き、毎年、同様の内容が掲載されてきた。
この09年度版には、中国の人権状況が悪化していることを指摘。これに中国政府は早速、「国別人権報告書を発表して他国の内政に干渉するのをやめるよう忠告する」と反発した。
だが、日本政府は今のところ、拉致監禁問題に対する指摘に反応し、アクションを起こした形跡が見られない。世界が知る米国の警告に対し、あまりにお粗末、鈍感だと言う他ない。
(「宗教の自由」取材班)