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“拉致監禁”の連鎖(197) 米議員、「米国は介入を」
米議員、「米国は介入を」
拉致監禁被害者との面会で、拉致監禁によりやせ細った後藤徹さんの姿が載ったパンフレットを見る国務省国際宗教自由事務局のビクトリア・アルバラード氏
「国境なき人権」の報告書が昨年末に公表されてから、日本の拉致監禁への非難の声は国際社会で一層高まっている。特に反響が大きかったのは米国だった。米国務省が「国際宗教自由報告書」で報告書を取り上げただけでなく、米国連邦議会の議員らも調査のために日本を訪れるなど素早い動きを見せた。
今年4月には下院議員らが訪日し、被害者と面会。日本政府関係者とも会い、拉致監禁に対する見解を求めた。
訪日した議員は帰国後の5月8日に、米国務省の国際宗教自由担当者に調査の詳細を報告している。
2度にわたり拉致監禁被害に遭った美山きよみさんも、下院議員事務所で行われた報告の場に同席し、国際宗教自由事務局の事務方トップであるビクトリア・アルバラード氏や国務省の東アジア人権担当クレア・デービスロング氏ら同省関係者4人と面会した。
現地調査をした議員は「日本の文化伝統では、この(拉致監禁)問題は家族の問題であるとみなされる傾向がある」と説明。その上で「被害者は全員成人であり、拉致、暴力、身体的心理的虐待から法によって守られなければならない」と訴えた。
さらに「米国をはじめとする国際社会は、個人の人権と宗教の自由を守るために、この問題に介入すべきである」と、米国が問題解決のために積極的に動くよう求めた。
「国境なき人権の報告書が『日本政府は拉致監禁の被害者たちに、公式に謝罪すべきである』としたことに涙が出るほど嬉しかった」という美山さんは、国務省の宗教自由担当者たちを前に、拉致監禁がいかに悲惨で、被害者たちの心の傷がどれほど深いかを、まくし立てるように語った。
美山さんの切実な話に、アルバラード氏は被害者の置かれた状況を察し、目を潤ませながら真摯に耳を傾けた。
アルバラード氏は「人権侵害はその国の文化、習慣に隠されていて、当事者国の人はなかなか分からないものだ。拉致監禁は明らかに人権侵害だが、当事者国の家族制度の陰に隠れて見えなくなっている」と日本政府が拉致監禁問題から目をそらしていることを懸念した。
また、「世界各地における宗教の自由を守る上で、米国の役割は重要だ」と述べながら、1998年に成立した「国際宗教自由法」の意義を強調。「国境なき人権の報告書はすでに受け取っている」とも明かした。
1時間半以上にわたった面会の最後に美山さんは、アルバラード氏に次のメッセージを伝えた。
「日本の官僚は(拉致監禁という)人権侵害がないと言っているが、それは嘘だ。私たちはあなたの助けが必要だ」
その翌日、国務省から「日本から拉致監禁の被害者が来ていると聞いているので、国際宗教自由担当大使のスーザン・クック氏が会いたいと言っている。明日、国務省に来てほしい」という連絡が被害者らにあった。
美山さんら被害者の訴えに心を動かされたアルバラード氏が、上司であるクック氏に拉致監禁問題を詳しく報告し、「日本から興味深い被害者が来ているから、大使もぜひ会ってください」と伝えていたのだ。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-