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“拉致監禁”の連鎖(194) 痛ましい「親子の断絶」生む
痛ましい「親子の断絶」生む
拉致監禁被害者(左)の聞き取り調査をする人権活動家のハンス・ノート氏
国境なき人権の報告書は、統一教会信者とエホバの証人信者の拉致監禁被害者が起こした裁判も取り上げている。それぞれ、棄教目的の拉致監禁の事実が民事訴訟で認定されたことを挙げ、エホバの証人信者の勝訴は「(拉致監禁の)抑止効果があった」と強調した。一方で、統一教会の信者に対する拉致監禁が今も続いていることに憤りを示した。
拉致監禁に対する警察の対応について「警察は拉致実行者である親の側に立つことが多く、拉致監禁の被害者の訴えがまともに聞かれないことが多い」と指摘し、捜査の公正さに疑問を突きつけた。
司法機関については「宗教がらみの拉致監禁事件で、司法機関は公正な判断をしてこなかった」と批判。被害者が司法に訴えることが少ないのは「実の両親を相手に法的措置をとるのが忍びないのと、他の被害者たちの経験から拉致監禁事件に関する司法機関の対応が信頼できないからだ」として、拉致監禁という明白な犯罪について司法が公正な判断を下すよう求めている。
12年以上監禁された後藤徹さんについては、特に詳しく被害状況を説明している。
後藤さんが監禁されていた現場での脱会屋の宮村峻氏の言動などから「(宮村氏は)後藤氏の自由が奪われていたことは百も承知だった」と断言。
後藤さんの事件を検察審査会が「不起訴相当」と判断したものの、同審査会の議決書から「後藤氏の家族が彼のことを単なるモノであるかのように見ていて、徹氏自身の信仰を持つ自由などは認めていなかった事実(中略)を検察審査会も理解していたことが分かる」と指摘した。
拉致被害者が心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症することについても言及。拉致監禁されたエホバの証人信者だった女性が「単独でいることを怖がり、友人宅に3週間滞在した」「物音に敏感に反応し、誰かが牧師と同じような話し方をするのに耐えられず、不安と不眠を訴え、夜中に手足を縛られる感覚を覚えた」などと訴えていたと強調。拉致監禁を実行した両親との関係も回復できず「いまでも両親は許せない。レイプした相手に対するような感情を持っている」と、被害者の負った後遺症が大きかったことを明らかにしている。
報告書は拉致監禁によって「痛ましいほどの親子の断絶」が生じているとし、「親も子供も脱会カウンセラーが喧伝してきた『解決策』の被害者だ」と、改めて拉致監禁行為を強い調子で非難した。
国境なき人権が著名な人権団体として初めて長文の報告書をまとめたのは昨年12月。拉致監禁の被害が確認されている1966年から実に長い年月が経過していた。
国境なき人権は、日本の新宗教信者に対する拉致監禁問題を「世界の人権団体がずっと見落としてきた」と、実態がなかなか伝わらなかったことに遺憾の意を表す。代表のフォートレ氏でさえ、国連NGOの関係者に「日本で現地調査をしてみるまでは、とても信じられなかった」と驚きをもって語っている。
しかし、国際的人権団体の報告書は世界を駆け巡り、世界の人権問題を扱う国連人権理事会の事務局的役割の国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)にも影響を与えた。
スイス・ジュネーブで今月22日から、国連加盟国を対象に人権状況を審査する国連人権理事会の普遍的・定期的レビュー(UPR)が開かれている。そこに提出される情報としてOHCHRがまとめた文書の中に、国境なき人権の拉致監禁問題報告書が取り上げられた。
(「宗教の自由」取材班)
-つづく-