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趣意書(4)−宇佐美側の供述調書、証拠をことごとく無視するという暴挙/火の粉を払え ルポライター米本和広blog
これまでの趣意書は「原判決の認定事実の中の事実誤認」を指摘したものだったが、今回と次回は「原審証拠上認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認」を述べたものである。趣意書の核となる部分である。
目 次
第1 はじめに……1頁
1 本件控訴の概要・・・・・・1頁
2 被告人の主観に関連する背景事情の用語説明……1頁
第2 訴訟手続の法令違反……2頁
1 証拠調べ手続きに関する不服(弁護人請求証拠の不採用)……2頁
2 訴訟指揮に関する不服(弁護人に対する尋問制限)……3頁
3 審理不尽……4頁
(上記は 「訴訟手続きの法令違反」
第3 原判決の認定事実の中の事実誤認……5頁
1 原判決「犯行に至る経緯等」の?乃至?の記載中の事実誤認……5頁
(1) 認定事実?について……6頁
(2) 認定事実?について……6頁
(3) 認定事実?について……7頁
(4) 認定事実?について……7頁
(5) 認定事実?について……8頁
(6) 認定事実?について……9頁
(7) 認定事実?について……9頁
(8) 判決への影響……10頁
(上記は「事実認定の中の事実誤認」を参照のこと)
2 原判決の判示1乃至5の各行為についての犯行状況の記載中の事実誤認……10頁
(1) 判示1の行為の犯行状況……11頁
(2) 判示2の行為の犯行状況……12頁
(3) 判示3の行為の犯行状況……13頁
(4) 判示4の行為の犯行状況……14頁
(5) 判示5の行為の犯行状況……14頁
(6) 判決への影響……15頁
(上記は「事実認定の中の事実誤認」
第4 原審証拠上認定すべき事実を認定しなかったことの事実誤認……15頁
1 「被告人にはKの本心が分からなかった」と認定すべきこと……15頁
(1) 被告人の認識(総論)……15頁
(2) 認定事実??関連……16頁
(3) 認定事実?関連……17頁
(4) 認定事実?関連……18頁
(5) 認定事実??関連……18頁
(6) 認定事実?関連……20頁
(7) 認定事実?関連……21頁
(8) 認定事実?関連……21頁
2 判示各行為は恋愛感情充足目的の「待ち伏せ」にあたらないこと……22頁
(1) 総論……22頁
(2) 判示1の行為時の認識……23頁
(3) 判示2の行為時の認識……25頁
(4) 判示3の行為時の認識……26頁
(5) 判示4の行為時の認識……28頁
(6) 判示5前段の行為時の認識……31頁
(7) 判示5後段の行為時の認識……33頁
(8) 認識の認定に関する原判決の誤り……35頁
(9) 方法について……36頁
第5 法令適用の誤り……36頁
1 恋愛感情充足目的の解釈……36頁
2 「待ち伏せ」の解釈……37頁
3 「不安を覚えさせる方法」の認識……38頁
4 ストーカー規制法を適用すべき事案ではないこと……39頁
第6 量刑不当……40頁
1 動機の点……40頁
2 手段方法と結果の点……41頁
*今回アップしたのはゴチックの部分。
第4 原審証拠上認定すべき事実を認定しなかった事実誤認
1 「被告人にはKの本心が分からなかった」と認定すべきこと
原判決は,15頁の2項において
「上記認定事実によれば,判示各行為の当時,被告人は,Kには被告人に対する恋愛感情がなく,被告人と結婚する意思も全くなくなったことを知りながらも,終始,Kに対して強い恋愛感情を有し,Kと会い,どうにかしてKとの関係を修復しようと考えていた」
とし,
「判示各行為は,・・・Kとの関係を修復したいという被告人のKに対する恋愛感情を充足する目的で行われたもの」
と認定した。
上記の下線部分の事実認定が宇佐美氏を有罪とした重要な論拠になっている。読者にはこの数行を頭に叩き込んで、以下の趣意書を読んでもらいたい。
枝葉のことになるが、とても違和感を覚えたのは「強い恋愛感情を有し」という記述である。宇佐美氏がKに恋愛感情を抱いていたことを否定することはできないが、「強い」恋愛感情だったことを示す証拠(供述含む)はどこにもない。 少なくとも、公判を傍聴していて、「強い恋愛感情」という言葉が使われたことはなかった。念のため、「検察の論告」を読み直したが、検察とて使っていなかった。
福士裁判官は、宇佐美氏がストーカー行為を行ったというストーリーをもっともらしくするためには、証拠にない「強い」を入れたかったのであろう。つまり、作為ある文である。
しかし,前記第3.1のとおりの事実誤認がある以上,上記前者の「・・・知りながらも・・・関係を修復しようと考えていた」という認定をすることができず,よって,上記後者の「・・・恋愛感情を充足する目的で行われたもの」という認定もできないというべきである。
さらに,以下に述べるとおり,原審に顕れた証拠により認められる事実からすれば,被告人には,Kの脱会意思や婚約破棄の意思を信じることができず,本心が分からなかったと言える合理的な理由があったといえるから,むしろ,恋愛感情充足目的はなかったと認定すべきであった。
(1) 被告人の認識(総論)
原審において被告人及び弁護人が主張したとおり,被告人は,Kとの結婚を間近に控え,極めて良好な交際をしていたにもかかわらず,平成20年1月1日にKが帰省して行方不明になって以降,Kとのメールや電話等による直接的連絡が一切できなくなった。このとき,被告人は,
(ア) 統一教会信者に対して,その信仰を反対する両親らが,「職業的強制改宗屋」<15頁>
の協力を得て,「拉致監禁」し,強引に棄教を迫る例が過去に多数あり,
(イ) 信者によっては,自分の内面的信仰を守りつつ,拉致監禁から解放されるために,外形上脱会を装う偽装脱会という方法をとる例も少なくなく,棄教を迫る側も偽装脱会ではないか確認するため,まずは統一教会宛の脱会届に始まり,統一教会に対する金銭請求などの「踏み絵」を踏ませる例が多い,という認識を持っていた。
その上で,Kの失踪状況において
(ウ) Kの両親がもともとKの信仰に反対していた事実があり,Kの両親らによる強制改宗を目的とした拉致監禁が強く疑われる状況,及び,
(エ) Kの統一教会宛脱会届があって以降は,偽装脱会をしているのではないかと思われる状況,すなわち,Kの脱会と婚約破棄が本心であると信じることができない合理的理由があったためKの本心がわからなかった。そこで,Kと直接会って,その本心,すなわち,脱会意思及び結婚意思の有無を確認する必要があり,その前提として,まずはKの居場所を捜し,Kの状況を探る目的から,判示各行為を行ったのである。
(オ) なお,被告人は,あくまで家族的な愛情からKのことを心配するとともに,本心を確認するために捜していたのであり,Kの本心を無視してまでKとの関係を修復しようとは,全く考えていなかった。
以上の被告人の認識は,被告人自身が,捜査段階の調書(乙2・原審記録1283丁,乙4・原審記録1314〜1315丁,乙5・原審記録1325丁以下,乙8・原審記録1362丁以下,乙13・1383丁,乙14・原審記録1387丁以下),公判供述及び最終意見陳述(原審記録88〜89丁)において一貫して述べてきたことである。
しかも,かかる被告人の供述は,原審における各証拠(中務供述,山川供述,澤田供述)とも整合するため,信用性が高いというべきである。
以下詳述する。
(2) 原判決の認定する経緯等の事実??の関連
原判決は,「(1)犯行に至る経緯等」における認定事実??において,被告人の判示各行為の目的に関連する主観的認識に関し,以下のような事実を証拠に基づいて認定できたはずであるにもかかわらず認定していない。
(ア) 原判決は,上記?において,被告人とKが結婚を前提とする交際を続けていたことは認定するが,その交際状況は,失踪する直前まで非常に親密で良好な関係にあり,相互に,日常的に,電話やメールを頻繁に交わしていたこと(弁1ないし弁2・原審記録1080〜1247丁)。
(イ) 上記(ア)の事実からすると,Kが,実家に帰省した以降,被告人に対し,電話やメール等の連絡を一切しないのは極めて不自然であること。
(ウ) もともと被告人は,統一教会信者に対して,家族が強制改宗屋の指導協力を得て,<16頁>
拉致監禁という手段で強制棄教がなされる例があると認識していたこと。
(エ) 被告人は,交際中に,K本人から,Kの両親はKの統一教会の信仰に反対していて,過去に,Kに対し拉致監禁を試みたことがあると聞いていたこと。
以上の事実認定は,まさに,前記(1)の(ウ)の「Kの両親らによる強制改宗を目的とした拉致監禁が強く疑われる状況」であると被告人が認識したことを直接的に裏付ける事実であり,Kが被告人に連絡をしないのは,被告人を嫌いになったとか,結婚の意思がなくなったからなどという唐突で単純なものではないことを示す事実である。
被告人は,Kが行方不明になった当初に,上記のように,拉致監禁が強く疑われる状況と認識したために,その後のKの脱会意思や婚約破棄の通知の内容を信じることができなかったのである。ところが,原判決は,この出発点の被告人の認識について,上記の事実認定をしなかったため,被告人がKの本心を信じることができなかったことについて合理的理由があるという認定ができず,重大な事実誤認につながったというべきである。
(3) 原判決の認定する経緯等の事実?の関連
原判決は,被告人が,中務から,Kの平成20年12月の統一教会脱退通知及び婚約破棄に関する内容証明郵便が送られて来たこと,及びKと電話で話したことを聞いた事実を認定し,当該事実をもって,被告人が,Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知りながら,Kとの関係を修復しようと考えていた根拠としている。
しかし,原判決は,被告人には,上記内容証明郵便送付の事実を聞いても,本当に被告人に対する結婚意思等が無いとは知り得ない合理的な理由となる以下の事実が原審証拠から認定できるにもかかわらず,認定しなかった。即ち,
(ア) もともと被告人は,行方不明になり拉致監禁されたと疑われる統一教会信者が,しばらくして,同教会側に定型的な文章で内容証明郵便による脱会通知を送付してきた場合,偽装脱会である場合があることを知っていた。
(イ) 被告人は,Kについて,被告人自身よりもずっと強い信仰心をもっていると理解しており,かつ,Kとの最後の別れ際に,拉致監禁を心配する被告人を安心させたKの表情と言葉が忘れられず,Kがそう簡単に本心から棄教することはないと認識していた。
上記(ア)(イ)の認識があったので,被告人は,Kの内容証明郵便の内容を中務から聞いても,それがKの本心であるとは,到底信じられなかったのである。同内容証明郵便のことを被告人に伝えた中務自身も被告人と同様の認識であった。(中務調書p4,第6回公判被告人調書p20以下)<17頁>
さらに,被告人が中務からKと電話で話したことを聞いた件に関し,中務は,原審公判廷において,電話でのKの雰囲気からKが偽装脱会をしている可能性が高いと伝えた旨供述しており(中務調書p8),同様に,被告人も原審公判廷において中務から「偽装脱会に見えた。」と伝えられた旨供述しているのであり(第6回公判被告人調書p23),中務とKが電話した内容を聞いた被告人は,Kが偽装脱会をしている可能性が高いと強く認識するようになったのである。
私が驚いた事実がある。教会員とて耳を疑うような話だと思う。
ある青年教会員(女性)は資産家である親の金をちょろまかし統一教会に献金していた。 その女性教会員は拉致監禁され、牧師から脱会説得を受けた。彼女は脱会し、内容証明郵便で脱会届を出すとともに、牧師から紹介された弁護士を立て、教団に1000万円だったかの献金等返還請求を行った。示談交渉は成立し、某かのお金が彼女の親の口座に振り込まれるようになった。
彼女は脱会後も、入信前・入信中と同じように何事もなかったかのように親と一緒に暮らしている。
ところが、である。
彼女は、再び親に隠れて教会に通い出した。偽装脱会だったのである。
作り話と思われるだろうが、ノンフィクションである。彼女が特定されるゆえ、ディテールを書けないのは残念だが。
こんなこともあるのだから、Kが脱会届を出し、返還請求の示談が成立したあとも、私も宇佐美氏たちと同じように、偽装の可能性は高いと思っていた。
このように,Kの前記内容証明郵便及び中務との電話内容に関する被告人の認識については,前記被告人供述だけでなく,これを裏付ける中務供述も存在する。
にもかかわらず,原判決は,前記被告人の認識に関する被告人供述及び中務証言を完全に無視しており,明らかに事実誤認である。
(4) 原判決の認定する経緯等の事実?の関連(宮村供述の信用性)
原判決は,宮村がKの被告人に対する本心を確認して,それを被告人に伝えた事実を認定し,その事実を,被告人が,Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていた根拠としている。
しかし,原判決は,被告人にとって,宮村という人物は全く信用できない以下のような事情があることについて,原審証拠上認定できるにもかかわらず,認定しなかった。
(ア) 宮村本人の公判供述からも明らかであるとおり,宮村は,統一教会信者に対する脱会支援活動を,27,28年間行っている人物である(宮村調書p16)。
(イ) 被告人は,宮村について,同人は拉致監禁という違法な手段を用いて統一教会信者を長期間にわたり監禁した上,執拗に脱会説得を行う人物であり,このような説得を受けた統一教会信者は,監禁から逃れるため,本心では脱会していないのに脱会届を作成するなどのいわゆる偽装脱会をするケースが多々あることと認識していた(第6回公判被告人調書p25〜27)
(ウ) 被告人は,平成21年11月に宮村と会う前,宮村がKの脱会説得に関与していることを知った(第6回公判被告人調書p25)。
このように,宮村が前記のような脱会説得をする立場の人間であり,かつ,Kが偽装脱会をしている可能性もあると認識していた被告人としては,宮村から,「彼女が会いたくないと言っている。」と伝えられても,それがKの本心であると受け止めることができなかったのである。
したがって,宮村がKの被告人に対する本心を確認して,それを被告人に伝えた事実をもって,被告人が,Kの被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていたと認定した原判決は,明らかに事実誤認である。<18頁>
(5) 原判決の認定する経緯等の事実??の関連
原判決は,被告人が,Kの書いた被告人宛ての手紙(甲66・原審記録1053丁)及び指輪や携帯電話等の荷物が被告人の実家に送られる可能性があることを事前に認識し,被告人の母親に当該荷物の受け取りを拒否するよう言った事実を認定し(認定事実?),当該事実をもって,被告人が,Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていた根拠としている。
しかしながら,被告人は,原判決の認定事実?に記載の宮村とのもみ合いになった後の宮村からの電話があった際に,Kから被告人に返す荷物を預かっているので返したいと言われ,K本人から受け取りたいと言ったにもかかわらず,宮村が返すと言い続けたため,被告人は受取を拒否したといういきさつがあった。
このいきさつについて宮村供述と被告人供述には食い違いがあるが,被告人供述の信用性が高いことは,弁論要旨9頁において述べた通りである。
被告人は,本当に脱会したならK本人が返してくればいいものを宮村が仲介すること自体に反発と疑問を感じ,宮村を介した荷物の受取を拒否したのである(第6回公判被告人調書p30)。
原審は,認定事実?において,被告人が宮村に対し荷物の受取を拒否した前記のようないきさつを一切認定することなく,認定事実?では,ただ,被告人が母親に「Kからの」荷物の受取拒否を依頼したことだけを認定することで,被告人がKの結婚意思等無くなっていると知っていたという誤った事実の認定根拠として利用しているように見える。
そもそも,Kは,被告人がKを心配して捜し続けていることを知っていながら,交際当時に承知していた被告人の住所宛てに,全く1度も荷物や手紙を送ってみることもなく,いきなり,宮村を介して被告人の実家に送ったこと自体があまりに不自然であり,本当にKの意思でそのようなことをしたとすれば非常識かつ不誠実極まりないというべきである。
Kは、宇佐美氏に婚約破棄通知文を送付したあと、宇佐美氏の住所(埼玉県)、電話番号を知っているにもかかわらず、あえて九州の実家に荷物と手紙を送った。
統一教会が絡もうがそうでなかろうが、直接相手にではなく、相手の実家に送る。常識外れの行為である。そんなことをされたら、宇佐美氏に限らず誰だって、婚約者の真意を訝しく思い、いろいろ勘繰るのは当然のことだろう。
今回の一連の“事件”の根本原因は、Kの常識では考えられない、度外れなと表現していいほどの不誠実な態度にある。
婚約破棄の通知文を送った直後に、宇佐美氏に直接電話するなり、直接手紙を送るなりして、「婚約破棄の意思は本物である」ことを伝えれば良かっただけのことである。
Kは「拉致監禁されたら、脱会を偽装して、難を逃れる」というやり方が行われていることを知っていたのだし、宇佐美氏が自分のことを偽装脱会だと疑い、探していることを認識していたのだから。
直接意思を伝えていれば、“事件”に発展することはなかったし、私たちの税金(警察・検察・裁判費用)が使われることもなかった。
K自らの意思で、非常識な行動を取ったとは思われない。すべてはタワー長である宮村の指示によるものだろう。
宮村は(宮村に限らないようだが)、現役会員が苦しむ姿を想像するのを楽しむようなサディスティックな性格の持ち主のようである。
韓日祝福した田中妙子さんのケースでも、韓国からやってきた婚約者に田中さんを会わせようとしなかった。
【関連記事】「事件のその後と新しい事件」。
教会員の夫を強制脱会させた2つのケースでも、妻が子連れで必死に探していることを知っていながら、会わせようとはしなかった。夫と妻がその後、目を交わしたのは、数年後の離婚裁判のときだった。これには正義の弁護士、山口広も絡む。
【関連記事】『我らの不快な隣人』の186〜190頁。人から嫌われる性格は別にして、宮村は脱会説得に自信があるからなのか、「俺はそのへんのヘッポコ牧師とは違う」とうそぶいているという。ならば、婚約破棄を告げた女性の真意を疑っている婚約者(あるいは伴侶)に、脱会者から直接意思を伝えるようにさせればいいだけのことではないのか。
しかし、宮村はいつからか怯えるようになった。
自分と親しくなり、心を許すようになった脱会者とて、<こいつの本心はわからない>と猜疑するようになったのだ。
それは、いつのことか。
鳥海豊氏の偽装脱会事件(宮村にとっての表現)からであろう。
鳥海氏と宮村が心を通わせていたのは、「証言『脱会屋』の全て―監禁250日 」を読めば理解できるはず。けっこうプライベートなことまでお互いにしゃべっている。まだ書かれていない秘話もあるはずだ。
その鳥海氏が教会に戻り、なおかつ暴露本まで出版した。
発熱したのではないかと思われるほど、宮村にはショックな出来事だった。なにせ、鳥海氏の親に「否定本」を書くように提案したほどだから。
この事件をきっかけに、また加齢とともに、脱会者を信用しなくなってしまった。宮村が唯一信用するのは、寂しいかな、ベッドを共にする元女性教会員だけだろう。
こんなわけで、宮村は脱会の意思を表明し、なおかつ献金等の返還請求したKのことも信用できず、宇佐美氏に直接連絡を取らせようとしなかったのだ。
彼の怯懦というか猜疑心の強さは尋常ではなく、いまだKを実家に戻すことを認めていないのだ(公判中現在)。
ところで、読者はこんな疑問を抱くであろう。
弁護人はKの証人尋問のとき、「どうして直接、被告人のところに荷物&手紙を送らなかったのですか」という質問をしなかったのか。
実際、私も傍聴していてそのように感じた。
しかし、今では違う。質問したとしても「その質問は本件と関係ない」と福士裁判官から止められていただけであろう、と。
他方,被告人が被告人の母親に受け取りを拒否するよう言ったのは,メッセージ性のある手紙などではなく,あくまで荷物のことであり,被告人が認識していた荷物というのは,被告人がKにプレゼントとしてあげた物(本,携帯電話等)であろうくらいの認識であった(第9回公判被告人調書p9)。
被告人がKの前記手紙を見たのは,判決が認定したとおり,平成22年8月か9月頃であり,これは判示1,2の後である。
よって,原審の前記認定事実だけをもっても,被告人が,Kの被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていたと認定した原判決は事実誤認であるし,原審証拠上,被告人の宮村との荷物のやりとりのいきさつを無視して認定しなかったこと自体が事実誤認である。<19頁>
次に,原判決は,認定事実?では,被告人が,平成22年8月か9月頃に,Kの被告人に宛てた手紙(甲66・原審記録1053丁)を読んだ事実を認定し,当該事実をもって,被告人が,Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていた根拠としている。
しかし,原判決では,原審証拠上明らかな以下の事実が認定されていない。即ち,前記手紙が入っていた荷物について,
(ア) 伝票(甲65・原審記録1050丁)の「ご依頼主」欄に「神奈川県相模原市■■■■■■▲-▲-▲▲-▲▲」と書かれているのに,消印が荻窪川南の郵便局のものであり,
(イ) 緩衝材として杉並区や東京都の公報が入っていたことなどから,明らかに不自然であり,当該荷物がK氏の実家から送られたものではなく,荻窪にいる強制改宗屋の宮村氏が関与して,K氏の真意によらずに作成かつ発送された可能性があると考えた(第6回公判被告人調書p33〜36)
(ウ) 荷物に入っていた携帯電話のバッテリーが抜かれており,Kが実家に帰ってから連絡がとれなくなったときに,携帯電話を使えないようにされてしまったのではないかという被告人の推測が裏付けられたと思ったこと,
(エ) Kの前記手紙の内容が,交際当時のKのメールや手紙の内容とあまりに違い過ぎたので,これを,K氏が書いた文章であるとは到底思えなかった(第6回公判被告人調書p35)。
被告人は,K氏の前記手紙を読んだ時に,上記の事実を理由として,同手紙がKの本心や真意を表したものであるとは到底思えなかったのである(第6回公判被告人調書P35)。
そして,実際,荷物の発送に宮村が関与したことは,宮村自身が原審公判廷において認めていることから(宮村調書p16〜17),この点についての当時の被告人の推測は当たっていたといえ,当該荷物に入っていたKの手紙がKの真意によらず作成された可能性を,被告人が認識したことには,合理性がある。
したがって,被告人がKの被告人に宛てた手紙(甲66)を読んだ事実をもって,被告人が,Kの被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていたと認定した原判決は,明らかに事実誤認である。
反統一諸兄姉が事実に基づいて統一教会批判をするのは、大いにけっこうなことである。
ところが、反統一の中でも監禁諸派は、教会員の人格そのものを軽んじるというか認めない傾向にある。その顕れが宇佐美氏に荷物を送ったやり方にも見て取れる。
・依頼主の住所をKの実家にしたのだから、その近所の郵便局で発送すれば良かったはずだ。(前出の(ア))
・荷物の緩衝材に、荷造りしている部屋にあった東京や杉並区の公報を使わなくても良かったはずだ。(前出の(イ))
・携帯電話はバッテリーを入れて返すべきだった。郵便局がバッテリーの郵送を認めないのであれば、宅急便を利用すれば良かった。(前出の(ウ))
なぜ、宇佐美氏に訝しく思われるようなことをしたのか。
おそらく、たんに面倒くさかっただけだろう。つまり宇佐美氏の人格を軽んじるから、適当でいい加減な送り方をした。宇佐美氏が訝しく思うだろうことにさえ、頓着しなかった。
(6) 原判決の認定する経緯等の事実?の関連
原判決は,認定事実?において,興信所がKの居場所を調査し,調査結果報告書(甲52・原審記録439〜440丁)を作成した事実については認定するものの,その内容については,全くふれていない。
しかし,興信所の調査結果報告書の調査結果総括(甲52・原審記録439〜440丁)によると,<20頁>
Kの様子は,外出するときも,
「常に母親が後ろをついて周囲を警戒している関係からか,自由が無くどこか影を感じる雰囲気でした。」
とのことであり,また,Kが実姉宅から前記マンションに移った理由として,
「K■子様の統一教会脱会の意思が未だ定まっておらず,今後も暫くは母親の監視の下での生活を送らざるを得ない心境ではないかと考えられます。」
と述べ,最後に,Kに対する直接の意思確認を行う為には,
「居住先への直接アプローチよりも,K■子様が外出している際を見計らって心を寄せていた信者様を含む関係者によるアプローチを行う,K■子様ご自身が冷静に考えられる環境下において,素直な状態での意思確認を行うことが望ましいと思われます。」
と締めくくられている。
被告人は,当該調査結果報告書を読み(乙4・原審記録1319丁),これまで以上に,Kが偽装脱会をしている可能性があること,及びKに対する意思確認は,両親等による監視がない環境において慎重に行わなければいけないと思ったのである(第7回公判被告人調書p31)
上記調査報告書の内容を客観的に見れば,被告人が,Kの脱会意思や婚約破棄を信じることができなかったことに合理的理由があったというべきであり,認定事実?を根拠事実の一つとして,被告人がKの結婚意思等がないことを知っていたと認定した原判決は,明らかに事実誤認である。
(7) 原判決の認定する経緯等の事実?の関連
原判決は,Kが,平成22年1月以降,山口弁護士に教会からの脱会に伴う事件処理を依頼し,統一教会宛に金銭の支払請求を求める内容証明郵便を送り,その後も両親ともに事務所を定期的に訪れ,打合せを行っていたところ,その打合せに行くときは,Kの父親は車を利用し,相模原市内から,当時KとKの母親が一緒に住んでいた杉並区荻窪のマンションを経由して両名を車に乗せて新宿の山口弁護士事務所に向かい,打合せが終わってからは,Kらを荻窪でおろしてから相模原に帰っていたと認定する。
上記認定は正しいが,荻窪から新宿に行くために,わざわざ父親が相模原市内から車を出して,30歳を過ぎたKを送迎しているというのは,何か特別な事情がない限り不自然な事実であり,被告人は,Kが未だに両親や脱会支援者から偽装脱会の可能性を疑われていて,両親の監視下にあるのではないかと推測したのである(第9回公判被告人調書p15)。
確かに普通の大人であれば,荻窪から新宿まで地下鉄で30分程度で行けるのであるから,被告人がこのように推測したことはもっともなことであり,被告人が,Kの脱会意思や婚約破棄を信じることができなかったことに合理的理由があったというべきである。
にもかかわらず,原判決は,事実?を認定していながら,むしろ逆に,被告人がKの結婚意思等がないことを知っていたと認定しており,明らかに事実誤認というべきである。 <21頁>
代理人を立て統一教会に献金等の返還請求した脱会者で、詳細を聞いたのは宿谷麻子さんしかいないが、彼女が山口広弁護士の法律事務所のドアを叩いたとき、彼女は一人だった。そのときの年齢は30数歳。
麻子さんと同じような真正脱会者に聞いてみたい。
<あなたが弁護士に返還請求の依頼をしたとき、初回はともかく、毎回親が一緒でしたか>
弁護士にも聞いてみたい。
<あなたが元信者から返還請求を依頼されたとき、相談にやってきたのは、初回はともかく、毎回親御さんが一緒でしたか>
これについて否定するようなコメント投稿があれば認識を改めるが、そんなことはなかったであろう。
であれば、毎回親と一緒に弁護士事務所を訪ねるKのことを、宇佐美氏が「いまだ親の監視下にある」と判断したのは当然のことだと思う。
(8) 原判決の認定する経緯等の事実?の関連
原判決は,被告人が,中務から,Kが山口弁護士らに統一教会あてに金銭の支払いを求める事件の処理を依頼したことを聞いた事実を認定し,当該事実をもって,被告人が,Kには被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていた根拠としている。
しかし,この当時,被告人は,「脱会届を出した者に対し,脱会のための保護説得をした脱会支援者や両親らが,偽装脱会していないかどうかの『踏み絵』の一種として,統一教会相手に金銭請求を起こさせることがままあることなどが書かれた拉致監禁体験者の本を読んでおり,そのような認識を持っていた(第6回公判被告人調書p27)。
また,被告人は,当事者の合意さえあれば,片方が脱会しても結婚するケースがあることを知っていた(乙8・原審記録1365丁,第6回公判被告人調書p23〜24)。
よって,被告人は,中務から,Kが同教会に対する金銭請求を山口弁護士に依頼したという内容を聞いただけでは,K氏に結婚意思がないことを信じることができなかったのであり,上記本の内容を見れば,信じることができなかったことにつき合理的理由があったというべきである。
したがって,被告人が,中務から,Kが山口弁護士らに統一教会あてに金銭の支払いを求める事件処理を依頼したことを聞いた事実をもって,被告人が,Kの被告人に対する恋愛感情及び結婚意思がないことを知っていたと認定した原判決は事実誤認である。